「1:5の法則」や「5:25の法則」をご存知でしょうか?いずれもマーケティングの世界でよく使われるフレーズで、前者は、新規顧客の獲得にかかるコストは既存顧客との契約維持にかかるコストの5倍かかるとの考え方です。後者は、顧客離れを5%改善すれば利益を25%改善できるとの考え方です。会計士が独立開業する場合にも非常に重要な考え方でして、ここでは、既存顧客の契約期間を伸ばすための取り組みを紹介します。

顧客のフォローで顧客の財布を守る

既存顧客との契約期間を伸ばすためのいくつかの手段に共通する考え方は、顧客の利益に直結した活動を通して顧客満足度を上げ、自分の事務所へのロイヤリティを高めることです。税務会計で得られる情報に満足せず、顧客とのコミュニケーションを通して、顧客企業の成長戦略、事業保障の有無、事業承継への備えなどの多様な情報を収集することがロイヤリティを高めるための出発点であることは言うまでもないでしょう。

顧客期間を伸ばすための手段の一つが、顧客企業のキャッシュフローをフォローし、顧客の事業継続をサポートすることです。具体的には、資金繰り表の作成、資金調達の支援、売掛金回収サイクルの管理など、CFO的な役割を担うことになります。顧問先の倒産・廃業による顧問解約を回避できるだけでなく、顧問先の成長を支えることで顧問料のアップも期待できます。

他事務所に切り替えられないように

顧客期間を伸ばすためのもう一つの手段が、顧客ニーズに応え、他事務所への切り替えを防ぐことです。当然のように聞こえると思いますが、顧問先のニーズに応えるための事務所としての仕組みがなければ、所長や各担当者の能力や感覚に頼る部分が大きくなってしまいます。

そこで、業務の領域を超えて収集すべき情報(営業活動における懸念点、人事面の懸念点、顧客企業の成長戦略、事業保障の有無、事業承継への備え、代表者の家族構成、加入済みの保険、など)をリスト化するなどし、情報収集後の検討と提案の流れを仕組み化することで、顧客ニーズを拾いやすい組織にすることを推奨します。

また、自分の事務所だけでは解決できない顧客ニーズへの対応に備え、各種プロフェッショナルとの情報交換を通じたネットワーク構築を日頃から行うことも重要です。

会計士事務所・税理士事務所として独立開業後、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客との関係を維持することの重要性や、そのための手段をいくつか紹介しました。独立開業の準備や独立後の経営に役立ちましたら、幸いです。