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会計士コラム

J-Soxの留意点(会社目線①)

J-SOXは、財務報告に係る内部統制報告制度として、金融商品取引法上の制度になりますので、内部監査と異なり、その評価対象や評価範囲について制度に則った整備・運用が必要となります。しかし、制度上、全てを規定するのは難しいため、一定の部分については解釈の余地が残されています。

そこで、会社がJ-SOXを整備・運用するに当たっての主な留意点について触れていきたいと思います。まず第1回は、評価範囲の決定について。

評価範囲の決定

評価対象となる内部統制は、(1)全社統制、(2)決算財務報告プロセス、(3)業務プロセスに大別されるため、それぞれの留意点について記載します。

(1)全社統制

全社的な内部統制については、原則として、全ての事業拠点について全社的な観点での評価が必要ですが、財務報告に対する影響の重要性が僅少な事業拠点を評価対象としないことが可能です。

重要性が僅少な事業拠点とは、例えば売上高で全体の95%に入らないような連結子会社は僅少なものとして外すといった取扱いが基準上認められていますので、実際の運用としては、拠点ごとの売上高の一覧を基に上位95%に当たるまでの会社を評価対象としている会社が多いと思います。但、毎期一律に適用すると、ギリギリのラインにある会社については、年度によって評価対象となる会社と評価対象から除外される会社が出てきてしまいますので、評価の継続性の考え方を取り入れている会社もあると思います。

また、売上高だけの基準でラインを引くと、重要な研究開発拠点など、売上高に重要性はないが、会社が事業を行う上で重要な事業拠点が評価対象外となってしまうリスクがありますので、95%基準の対象から漏れた拠点についても、評価対象とすべき拠点がないか、リストを確認する必要があります。

(2)決算財務報告プロセス

決算財務報告プロセスのうち、全般的な事項については、全社統制の評価範囲に含めて実施されていることが多いと思います。上記にプラスして、財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスについては、個別に評価対象に追加する必要があります。この観点で追加されるプロセスは、基本的には見積項目となりますので、本社の経理部で対応するプロセスが多くなると思いますが、それ以外の拠点でも、よく虚偽表示が報告される勘定科目に関連するプロセスについては、個別に評価対象に追加すべきかの検討が必要となります。

なお、見積項目には、税効果、引当金及び減損などが該当すると思います。これらの項目を最終的にどのように会計処理するかは、監査法人との協議により決まっていくのが通常ではありますが、重要な見積もり項目であることに変わりはありませんので、評価対象としている会社が多いと思います。

(3)業務プロセス

事業目的に大きく係る勘定科目に関連する業務プロセスを選定し、評価対象とする事業拠点を売上高等の重要性により決定する必要があります。まず、事業目的に大きく係る勘定科目は会社によって異なる部分ではあるが、一般的な会社であれば、売上、売掛金及び棚卸資産が該当することになると思います。

その他に事業目的に大きく係る勘定科目がないかを、自社の財務諸表をレビューして、確認する必要があります。例えば、重要な設備投資を行う必要がある会社であれば有形固定資産、事業を行うに当たり重要なシステム投資を行う必要がある会社であれば無形固定資産を、評価対象として追加する必要があるかもしれません。

事業目的に大きく係る勘定科目を選定したら、評価対象とする事業拠点を決定する必要があります。評価対象とする事業拠点の選定は、全社統制の評価対象の選定と同様に、売上高の大きい順に並べて概ね2/3を占める事業拠点を対象として選定する必要があります。

この事業拠点の選定についても、いくつか留意すべき点があります。まず、売上高の大きい順に機械的に2/3を選定すると、ギリギリのラインにある会社については、年度によって選定される会社と選定されない会社が出てきますので、ある程度の継続性は考慮すべきと考えられます。

また、事業戦略上、製造拠点を新興国に移したり、重要な販売拠点が新興国に移るようなこともあり、新興国にある拠点が重要な事業拠点に選定されることも多くなっていると思います。新興国によっては、そもそも内部統制という概念が十分に浸透していない国や内部統制が十分に整備・運用されていない国など、日本の拠点と同じように導入することが難しい国がほとんどではないでしょうか。このような国に導入する場合、いきなり本評価となると、不備が多数出てその対応に苦慮することになりますので、会社の将来計画などを基に、将来的に拡大を模索している拠点については、本評価対象になる前に内々で予備評価を実施するなど、事前準備が重要になってくると思います。その際には、本社から人材を一定期間派遣することも検討する必要があると思います。