事業会社において会計士が求められるポジションとしては、経理、経営企画、CFO、取締役、監査役などが想定されます。実際に、多くの先輩会計士が、監査法人のあとに事業会社に転職して活躍しています。

事業会社に就職すると、当たり前のことですが、普段コミュニケーションをとる相手はほぼ会計士以外の方です。中には、社内会計士が数人在籍する大企業も存在しますが、多くの会社ではそう何人もいないでしょう。監査法人内にいると当たり前で気づかないことも、外の世界に飛び込むと、監査法人は貴重で特殊な環境であることに気づくものです。

事業会社では、専門家でありながら企業の一員であることを自覚して振る舞うことが大切といえるでしょう。事業会社に身を置いている筆者が、活躍するために特にポイントと思う点を挙げます。

会計士の専門知識や共通言語は通じない

監査法人では、身内は全員、会計の専門家。専門家が集まったチームで一つの仕事を進めるため、先輩や上司にすぐに質問ができる環境です。同期がすでに経験しているような論点であれば、チームを超えても相談しやすいでしょう。また、クライアントも主に経理担当者ですので、会計基準や開示など、あるべき方向性や専門用語をわかっています。

ところが、事業会社では、会計の知識がある方ばかりではありません。そのため、会計の専門的な論点を伝えたい場面ではわかりやすい言葉に置き換えなければこちらの意図や要望が伝わりません。難しい話をわかりやすく説明するのはとても難しいことですが、自身を翻訳家と意識してみてはいかがでしょうか。

社内・社外調整力が必要

特に経理であれば、締めの期限までに必要な情報や適切な処理を現場から吸い上げる必要があります。趣旨をうまく伝え、期限までにそろわないことも想定しながら情報を集められる環境や信頼関係を作っていくことが大切と考えます。

経営企画・CFOなどであれば、経営陣を含む社内の調整はもちろんのこと、監査法人・証券会社・銀行などの外部の方ともやりとりをする機会があると思います。外部からの要望を社内にうまく伝え、あるべき方向へ導くためのコミュニケーションを普段から重ねておくことが大切と考えます。

会計士の仕事は、監査でなくとも、人の話を聴くことから始まることが基本といえます。事業会社内勤務でも同様に人の話を聴きながら、会計士のスキルや経験をおおいに発揮し、会社を主に数字面や内部管理面から支えることができます。事業会社で会計士として活躍する自身の姿も、キャリアの一つとして考えてみませんか。