会計専門家や経理の仕事はAIに代替される、という話題を雑誌や新聞などで目にすることが多くなりました。

 ベンチャー企業から大企業まで、AIを活用したサービスやFintechサービスの開発が日々進んでいます。数年後、または数十年後の未来は、私たちがいま容易に想像できない技術がさらに生まれ、仕事の進め方は今と異なるものになっているでしょう。

すでに現代でも、単純作業や膨大なデータの処理はAIを活用したツールのほうが短時間で疲れることなく結果を出せるのは間違いありません。

 それは私たちにとって脅威なことでしょうか?単純作業の時間が減る分、私たちは、仕事で価値を生み出す時間や余暇の時間に充てることができるのです。この人材不足と言われる時代に、便利な技術の活用は選択の問題ではなく必須となると考えられます。PCや電卓、携帯電話が当たり前の時代になり、そろばんや紙だけの時代に逆戻りはできないのと同様のことなのです。

 具体的に会計人の仕事にはどのような影響があるでしょうか。
監査でいえば、試査から精査へと移り変わるかもしれません。確認状の電子化は今以上に進むかもしれません。銀行取引や簿外債務の網羅性を確認するために、金融機関のデータベースへ直接照会することが可能になっているかもしれません。会計士の単純作業が大きく減ると、不正への対応や経営者とのディスカッション等に時間を十分に使うことができます。

税務の分野でも、今もすでに銀行データとの連携により預金取引を帳簿に反映することでいち早く帳簿作成ができます。各種のデータ集計が自動的に行われ、申告書やその他の書類が自動的にできあがり、あとは最終確認するだけ、というのも時間の問題でしょう。その分、経営判断や税務対策をタイムリーに行うことができます。

 公認会計士という高度な資格を目指した時点で、自分自身に価値をつけたかったという思いのかたも多いのではないでしょうか?
 AIと本格的に共生する時代が到来したら、私たちは、今以上に専門家にしか生み出せない価値を創造し提供する時間を多く確保することができます。優れた技術に興味を示し、積極的に取り入れる姿勢でいることが大切と考えます。お客様の想いを理解し、コミュニケーションを密にとり、様々な情報を取捨選択して最善の方向性を導き出すことができれば、私たち会計人は必要とされる人材でいられるのではないかと思います。