公認会計士の視点から、会計基準その他業界TOPICを紹介します。
今回は、品質管理委員会より公表された「平成27年度品質管理委員会年次報告書」(平成28年5月18日)及び「平成27年度品質管理委員会活動に関する勧告書」を紹介します。日々監査業務に追われる先生方におかれてましては、一息つけるこの時期に、一年間の監査業務を振り返る意味でも、ぜひご一読いただきたいと思います。

「平成27年度品質管理委員会年次報告書」の概要

報告書は、通常レビューの実施状況・実施結果、改善勧告事項の分析、特別レビューの実施状況・実施結果、品質管理審議会からの勧告事項への対応、その他で構成されています。

(1)通常レビューの実施状況・実施結果の要旨

まず通常レビューは、レビュー対象83事務所のうち、「限定事項のない結論」63事務所、「限定事項付き結論」20事務所となりました。「限定事項付き結論」が表明された事務所が前年の9事務所から大幅に増加しています。これは、当年度より改正後の品質管理レビュー制度が適用されて、前年度までレビューの対象外であった会社についてもレビューを実施したこと、レビューの仕方も個別重点的に行われたことがあげられます。
昨今の会計監査への不信感を払拭すべく、当期以降もレビューはますます厳しくなり、「限定事項付き結論」は増加傾向にあります。

(2)改善勧告事項の分析

「監査業務における品質管理」については、「会計上の見積もりの監査」、「実証手続の立案及び実施」及び「監査証拠」における改善勧告事項が多く、「監査事務所における品質管理」については「品質管理の全般的体制」「品質管理のシステムの監視」及び「審査」に関する改善勧告事項が多い結果となりました。前回から引き続いて改善勧告事項に類似性が見られ、今期も引き続き重点レビューポイントになると考えられます。

(3)特別レビューの実施状況及び実施結果

特別レビューに関しては、”監査に対する社会的信頼を損なうおそれがある事態に関して特別レビューを実施している。特別レビューは会長通牒等の「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」および「財務諸表監査における不正への対応~不正による重要な虚偽表示を見逃さないために~」の趣旨を監査事務所が理解し、監査業務を実施する体制を整備しているかどうかの確認にあった。”とされています。平成28年3月期の監査実施体制ついては、特別レビューに関する改善勧告事項はなかったようです。

まとめ

レビュー対象が拡大しており、個人で監査を受けもつ事務所へもレビューが入る確率が高まっています。繁忙期が終わったこの時期に、来期監査の準備を万全にすることが望まれます。