内部監査と聞いて、会社で働いている人でよいイメージを持っている人はほとんどいないのではないでしょうか。自分達の実施している業務のあら捜しをする人というイメージを持たれている人が多いように感じます。

実際、少し前までは、内部監査部は会社の中でもあまり重要視されておらず、形式的なチェックだけが行われていたように思います。しかし、昨今の様々な会計不正などを受けて、やる気と能力を兼ね備えたプロを雇う会社も増えており、その中でも監査法人での監査経験を有する会計士を求める会社が目に見えて増えてきています。

しかも、求人に記載された想定年収は1千万円程度のものがほとんどですので、今後内部監査への道を選択する会計士が増えていくと予想されます。

そこで、今後、今までの監査経験を活かして内部監査業務に従事しようと考えている人に対して、内部監査の留意点を紹介したいと思います。

監査計画段階:監査テーマの決定

内部監査の対象は、J-SOXなどと異なり、何か決まったものがあるわけではないため、極端に言ってしまうと会社の全ての業務を対象とすることができます。そのため、監査計画を策定する段階で、監査テーマを決めることはとても重要なポイントとなります。

なお、「内部監査実施状況調査結果」にて、監査の対象業務についてアンケート調査が実施されており、そこには内部監査を実施する割合が高い業務が公表されていますが、購買から、製造、販売までの基幹業務全てが対象となっています。

監査テーマを決定するに当たっては、会社内での動きを十分に把握した上で、特に過年度から変化点があった領域を対象とするのがよいと考えられます。例えば、システム変更を実施した場合には、そのシステム変更が影響を与える業務、経営者や主要な部署の責任者の交代があった子会社や営業拠点など、の変化点があった領域では、何の変化点もない領域と比べて、業務改善に繋がるような指摘事項が潜在している可能性が高いためです

一方で、何の変化点がない領域であっても、定期的に内部監査を実施することは、被監査部門に対して監視機能を働かすことができるため、ローテーションで満遍なく回ることが重要となります。

監査実施段階:被監査部門等とのやり取り

内部監査は、被監査部門等の理解と協力が得られないと内部監査の効果がまったく上がらないという状況になりかねません。なぜなら、被監査部門から見ると内部監査部は敵と見做されているからです。

こうした事態を避けるためには、内部監査の目的を事前に十分に説明した上で、協力を引き出していく努力が重要となります。これで被監査部門が納得してくれればそれでよいですが、納得が得られないようなケースでは、外部の人間である監査法人を上手く使うなどの方法も考えられます。つまり、監査法人も問題意識を持っているテーマであれば、監査法人と一緒に往査するなど、外部の人間を上手く使うことで、上手くことが運ぶこともあります。

また、実際に被監査部門に対するヒアリングをしてみると、なかなか思い通りに事が運ばないことは多々あります。そもそもヒアリング対象者が上位者で、業務のことを全然理解していないケース、担当者が寡黙で多くを語りたがらないケース、担当者が話し好きで本来聞きたいことがなかなか聞けないケースなど、色んなケースが考えられます。

それぞれで対処法は異なると思いますが、寡黙な担当者に対しては話しやすいように実際の証憑
などを示してもらいながら説明を促したり、話好きの担当者に対してはあまり話を遮り過ぎるとご機嫌を損ねてしまうこともあるので、うまく軌道修正を入れながら喋らせて、知りたいことはしっかりと聞き取るというテクニックが必要になると思います。

監査終了後:フォローアップが重要

意外と忘れがちなのが、内部監査実施後のフォローアップです。内部監査を実施して、マネジメントへの報告が完了すると一区切りがつきますので、指摘した事項もそのまま放置されてしまって、結局何も変わっていないということはよく起こりがちなことです。

これを防ぐためには、フォローアップ用の報告資料の雛形を作成して、改善されたことが確認できるため、リストなどでしっかりフォローしていくことが重要になります。