加東「みんな、久しぶりだね!最近どう?僕は監査ばかりだよ。」

今日は監査法人事務所内での研修日。丸1日の研修を終えた後、入所当初からの仲良し同期7人は、前から行きたかったあんこう鍋専門店であん肝に舌鼓を打っていた。

志村「うちの部忙しくて、全然休みとれないよ。同期がまた一人辞めたの。そのフォローで大変で。私、監査現場の掛け持ちが増えたよ。」

木村「俺はアドバイザリーの部門に異動したけれど、ビッグクライアントで毎日大量の仕訳ばかり見てるよ。帰りも遅いし、単純作業が意外と多くて段々飽きてきた。」

三船「俺は他の部門の応援で内部統制のアドバイザリーをやり始めたんだけど、この会社の内部統制が滅茶苦茶で。文書化も一から作成し直しだし全然帰れなくなったよ。」

加東「3人とも忙しそうだね・・・あ、店員さんすみません、芋焼酎ロック追加で。」
木村と三船はビールを追加注文し、酒の弱い志村はウーロン茶、と言いかける。

千秋「志村ちゃん、お酒相変わらず弱いのね。ちょっとカワイイ。あたしはお酒足りない。日本酒飲む人~?やっぱあん肝には日本酒でしょ。」
加東、木村、三船が手を挙げる。千秋は志村のウーロン茶と日本酒を追加注文した。

千秋「あたし、結婚して1年経ったけど、生活は独身時代と変わっていないし、このままでいいのかなって思いはあるんだよね。子どもも欲しいし。でもこんなにガツガツ働いていたら先のこともなかなか考えられないし。」

志村「あ、それすっごく分かる。私はまだ独身だけど、自分の時間も持ちたいなとか思うと、毎日仕事に引きずられているような過ごし方でいいのかなって考えちゃうよね。」

木村「女性はライフイベントが色々あるからそれ考えると大変だよな。俺は将来自分はどんな仕事をやっていきたいのかとか考え始めるようになったよ。・・・ん?」
カラン、と店の入口の方で音がした。すぐさま、宮口と稲葉が連れ立って入ってくる。

宮口「ごめん、遅くなった。みんなもう2杯目か?ヤバイ、出遅れた。俺のあん肝まだある~?」
稲葉「ほんと申し訳ない。クライアント対応終わらなくて。今日は事務所で研修だからって言っておいたのに結局電話がかかってきちゃってさ。近くにいた宮口くんにもちょっと手伝ってもらってたんだよ。」

三船「おまえら本当に仲いいな。いつもそうやってお互いの仕事フォローしあってるじゃん。独立するのも夢じゃなさそう。」

稲葉「僕たちは部も同じだし、クライアントもかぶったりしているからね。持ちつ持たれつの方が楽だったりするときもあるから。」
宮口「そうそう。お互い様みたいなとこあるよな。」

加東「稲葉くんも宮口くんもお疲れ様!とりあえず飲もう!」
改めて全員で乾杯し、夜が更けていくのであった。

出会って5年。新人研修で同じクラスだった7人は、監査法人の中でそれぞれ異なった業務経験を積みながらもこうしてたまに集まっては酒を酌み交わしていた。
そう、彼らにはこれから、人生の転機が次々と訪れていくのだが、今の彼らには知る由もなく・・。