航空機・船舶を使った決算対策①
1.決算対策の分類
○これからご紹介する決算対策手法は、航空機や船舶を使った金融商品のうち、いわゆる「オペレーティング・リース」、「匿名組合方式」ないし「JOL(=Japanese Operating Lease)」などと呼ばれるもので、決算対策を検討する投資家が、航空機や船舶等の大型リース案件に出資参加(※1)し、大型の償却資産を取得したのと同様の効果を得る事により、税の繰り延べを可能とする金融商品です。
○この金融商品は、一般的に出資単位が3,000〜5,000万円と高額なため出資できる投資家が限られるうえ、この前身とも言える「レバレッジド・リース(通称“ジャパレバ”)」を巡り、過去、投資家と国税当局が訴訟を起こして(次回以降に説明します)おり、金融機関に勤める方の間でも正しい知識を持たずにリスキーなイメージのみを持たれる方が少なくありません。
2.本コラムの趣旨
○これから複数回に渡り、この航空機・船舶のオペレーティング・リースの仕組みや、生命保険を使った決算対策と比べたメリットやデメリットなどを説明します。
○なお、本商品の見込み投資家に対する投資の勧誘は、金融商品取引業者として登録を受けた者しか行うことができません。会計士の皆さまが投資の内容を説明し投資の勧誘を行うと、金融商品取引法違反となりますので、本商品を扱う金融機関等への紹介までに留めましょう。
○一方、本商品は、高額な節税ニーズのある法人の間では広く普及した決算対策手段のため、会計士の皆さまは、クライアント様から相談される機会もあるかと思います。そのような時に、本コラムがお役に立てば、幸甚です。
3.航空機・船舶オペレーティング・リースのメリットとデメリット
○航空機・船舶オペレーティング・リースが何かをご理解いただくため、まずはそのメリットとデメリットを簡単に列記します。具体的な内容は、次回以降に、本商品の仕組みに触れながら、説明します。
○主なメリットは、次の4点です。
・損金算入率、つまり出資した金額に対し初年度に算入できる損金の割合が60〜80%程度と、非常に高いです。
・生命保険と違い、支払いは1回のみとなります。そのため、次年度以降のキャッシュフローを心配する必要がありません。
・特に航空機の場合、マーケットが安定しているため、後述しますオペレーティング・リースの最大のリスクの一つであります期間満了時の売却リスクが、他の資産を使ったオペレーティング・リースと比べ非常に小さいです。
・出資単位が3,000〜5,000万円と高額なうえ、生命保険のような病院での診査も不要なため、比較的簡単な事務手続きで高額な決算対策を実現します。
○一方、主なデメリットは、次の4点です。
・米ドル建て商品が多く、外貨取引の少ない企業が投資家となる場合、為替リスクが発生します。
・契約期間が8〜12年に設定された商品が多い中、基本的に中途解約はできません。
・生命保険における保護機構のような救済措置はなく、元本保証がありません。
・出資単位が高額なため、資金に余裕のない企業は利用できません。
4.オペレーティング・リースとは
○事務機器や工場の生産設備をリースで導入するとの話はよくありますが、そのほとんどは、オペレーティング・リースではなく、ファイナンス・リースです。
○どちらも、リース会社が購入した動産を事業者へ一定期間に渡り賃貸するという点では同じですが、いくつかの点で違いがあります。ファイナンス・リースの場合、動産の購入価格に損害保険料や固定資産税などの諸経費を加えたものがリース料総額になります。一方、オペレーティング・リースでは、リース期間が終了した後にその動産がどのくらいの価値があるのかを予め見込んで、リース料を設定するのが最大の特徴です。つまり、将来の価値に基づいて設定した残存価値を購入価格から差し引いてリース料を設定します。また、リース開始時点においてリース会社と借り手である事業者とがリース期間満了時の売買価格を予め書面等で約束すると、税務上、ファイナンス・リースと認定されてしまうため、将来の売買価格は、その時点の時価となります。そのため、オペレーティング・リースは、一般的に将来の価値が見込める動産のみがリースの対象となります。
○また、ファイナンス・リースと違い、リース期間を自由に設定できるのも、オペレーティング・リースの特徴です。ファイナンス・リースでは、最短で設定できるリース期間は、リース物件の法定耐用年数の60%または70%までとのルールがありますが、オペレーティング・リースには、このようなルールはありません。
(※1)商法上の匿名組合契約に基づく営業者へ出資をするため、このような表現となりますが、口頭では「購入する」と表現される方が多いものです。
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