会計士や税理士の多くはキャリアの出発点としてプロフェッショナルファームを選びますが、その後の進路は多岐に渡ります。ここでは、独立の道を選んだ際の心構えなどを紹介します。

目的を考えることが独立の第一歩

独立開業を決めると、それまでお世話になった先輩や同僚、知り合いの経営者および金融機関などから毎回聞かれるのが、独立の目的です。独立を決めた方は誰でも、独立を通して得たいものや達成したいものがあると思いますが、誰が聞いても理解できる分かりやすい言葉で具体的に表現するのは、意外と難しいものです。しかし、独立の目的を分かりやすいレベルで表現できるまで考え抜くことは、非常に重要です。

独立の目的は、事業の目的でもあります。事務所を開業し経営を始めると大変な時期もありますが、そんな時に心の拠り所となるのが、事業の目的です。また、事業の目的は、やがて事務所の理念やビジョンとなります。事務所経営においては、正解のない中で判断を繰り返し下さなければなりませんが、理念やビジョンが、その際の判断軸となります。そして、事務所の規模が大きくなれば、理念やビジョンが従業員一人一人の判断軸となり、経営者が安心して従業員に仕事を任せるための基盤になります。

独立の目的を分かりやすいレベルで表現できるまで考え抜いたら、ご家族とも共有すると良いでしょう。会社員時代と比べ、開業後は孤独を感じることの多い経営者ですので、家族の協力が大きな支えとなります。

勝てる戦略をとことん考える

会計士や税理士は独占領域のある、規制で守られた業種ですが、有資格者(競合)の増加と事業者数(顧客)の減少が進む中、他事務所と差別化され競争を優位にする戦略がなければ、せっかく開業しても容易に成功することはできません。

重要なのは、開業する前の段階から、中長期的に事務所を成長させるための戦略を用意することです。戦略を「競争に成功するためのセオリー」であると定義すると、例えば、「創業支援」のように、顧客企業の創業期から創業融資をはじめとした付加価値の高い支援を継続しながら、顧客企業の成長と合わせてサポートのメニューを増やしていく活動などが、戦略と言えます。

紙に落とし込んで具体的な目的をたてる

独立の目的や競争戦略は、頭で考えるだけでなく、紙に落として何度も作り直し、納得感を高めると良いでしょう。また、1年後、3年後、5年後の売上や顧客数などの数値目標を設定すると、それらを達成するための打ち手や、より具体的な行動目標を立てやすくなります。ここで立てた計画を実行することで独立の目的の実現に近づくわけです。

会計士や税理士として独立開業を決意された方は、まず、独立の目的を明確にした上で、成功するための戦略を考え、これらを紙に落としてより具体化させた計画を作ることが大切です。