今回は、「航空機・船舶リース」、「オペレーティング・リース」または「JOL(=Japanese Operating Lease)」などと呼ばれる金融商品を使った決算対策コラムの最終回として、本商品の購入にあたり留意すべき主な4点について、説明します。

①為替リスク

船舶のリースでは円建ての商品も一部で存在しますが、航空機のリースはほぼ全て米ドル建てです。これは、ボーイングないしエアバス社からの航空機の購入も、海外のエアラインから受け取るリース料も米ドル建てで決済するのが業界の慣習だからです。そのため、通常の営業活動の中で外貨取引の少ない企業が投資家となる場合、為替リスクが発生すると言えます。

本商品の購入を検討するようなキャッシュフローに余裕のある企業にとって、為替リスクの観点からのポイントは、分配金の通貨です。米ドルで分配される場合、その時の為替が円高であればそのまま米ドルで円安になるまで運用することもできます。一方、日本円に換金されて分配される場合、その時点の為替レートで為替が確定してしまうため、注意が必要です。

②中途解約不可・高額

多くの商品の出資単位が5,000万円以上と高額で設定されているうえ、契約期間が8〜12年と長期に設定された商品が多いものの、生命保険のように途中で解約して解約(返戻)金を受け取ることは、基本的にできません。

無理のない出資額で検討することと合わせ、これら商品への出資を担保にローンを提供できるリース会社か否かも注意したいポイントです。現在のように異次元の金融緩和による金余りの時代では、融資を受けられることに価値を感じにくいものですが、将来の資金繰りのサポートは、経営の安心材料です。

高額商品ゆえ購入可能な企業の数が限られているため、士業や銀行員を含めて正しい知識を持つ方が少ないことも、リスクの一つと言えます。

③元本割れリスク

生命保険における保護機構のような救済措置はなく、元本保証がありません。

問題となるのは、主にレッシーであるエアラインの支払い能力の著しい低下と、航空機や船舶の中古価値の下落です。ポイントは、いずれのリスクも、リース会社の実績や営業力で極小化できるということです。

④益金の早期発生

墜落等により航空機等に保険事故が発生した場合、投資家の出資金は基本的に保険でカバーされますが、保険金が匿名組合へ支払われたタイミングがリース契約上の満期より早い場合、投資家への分配も早まり、予定よりも早く益金が発生します。

特にクライアント企業の決算日に近いタイミングで益金が発生すると、対策が立て難く、せっかくの決算対策がただの先送りで終わってしまいます。

これまで複数回に渡り、航空機・船舶のオペレーティング・リースの仕組みや、そのメリットやデメリットなどを説明しました。この金融商品は、高額な節税ニーズある日本中の法人の間で普及した決算対策手法の一つです。本コラムが、会計士の皆さまがクライアントから相談された際にお役に立てば、幸甚です。