テクノロジーの時代だからこそ大切なこと 〜機械化・効率化が進む中で〜

インターネットの普及、マッチングサイトの登場ならびに現在開発が進むAIの実用化により、日々の活動が効率化されるだけでなく、現在人間が対応している業務の一部が人間の手から離れると言われております。ご存知の通り、士業の業務も例外ではないようです。今回のコラムでは、そんなテクノロジーの時代だからこそ忘れてはいけない対面営業の価値について、お伝えします。
スイッチングコストの下落
一般的に、顧客が現在使用している商品・サービスを同業他社(者)のものへ切り替える際に顧客が負担するコストをスイッチングコストと言い、金銭的コスト、手間コスト、心理的コストの3点が主な要素と言われます。近年登場した士業のマッチング(紹介)サイトや、会計ソフトの進化により、これらコストの低下が続き、業歴の浅い企業などでは、以前と比べて簡単に顧問会計事務所を切り替える傾向があります。会計事務所側も若返りが進み、テクノロジーを積極的に活用する事務所が増えてくるでしょう。そのようなビジネス環境において、同業者と同じように、営業面においても機械化・効率化を追求した場合、何が起こると予想できますか?
ネット生保の失敗
将来を予想する際に参考になりそうな事例が、ネット生保です。11〜12年程前に日本で最初のネット専業生保会社が誕生しました。その後、既存大手数社もネット生保に参入しました。非常に注目されたこともあり、皆さんも当時のことを覚えていらっしゃると思いますが、実はその後の契約件数は伸びておらず、国内生保業界におけるネット生保のシェアは全ネット生保会社を合わせても1%に満たないと言われております。一方で、同時期から日本中のショッピングモール内などに出店された保険ショップが契約件数を伸ばしているのが実情です。この結果が示唆するものの一つが、テクノジーによる効率化の限界と言われております。つまり、いざと言う時のために長期に渡って契約関係が続くタイプの取引では、少なくとも現在時点では、対面での営業活動が非対面よりも受け入れられている、と言うことです。
対面営業の価値
既に独立され中零細企業の顧問をやられている方はご存知のことと思いますが、クライアントとの人間関係が築かれると、税務会計に全く関係ないことまで相談されます。直接的に対価の発生しないそのようなクライアントとのお付き合いを非効率と考える考え方も理解できますが、私は、そこにこそ対面営業の価値があり、そのような関係がある限り、いかにスイッチングコストが下がろうとも容易に他事務所に切り替えられることはないだろうと考えております。
現在、急速なスピードで新しいテクノロジーが登場しておりますが、顧客企業トップの若返りが急激に進む訳ではなく、20代・30代社長の割合が急に増える訳ではありません。様々な世代が混在する中、少しずつテクノロジー寄りの方が増えていくのは避けられないことと思いますが、そんなビジネス環境だからこそ、対面営業の価値を見直し、逆に競争優位として活用していただければと思います。

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