会計士として独立開業することは、自分が創業した組織の経営者になることと同意です。経営者になることは、経営管理する組織の規模に関わらず、メリットばかりではありません。独立開業に向けた心構えとして、デメリットを認識することも重要です。

独立している会計士は自由

プロフェッショナルファームなどの組織から独立することで得られる最大のメリットは、「自由」と言えます。個人の収入額、勤務時間、出勤時の服装などが分かりやすい例ですが、事務所の目的や理念・ビジョン、将来の目標なども自分で自由に決定しますので、それに合わせた顧客層、サービスライン、報酬価格、従業員の採用・教育、などを設計することができます。

こうして自分で自由に設計した事務所の在り方やその活動の結果は、業績として表されます。つまり、会社員であれば昇進や賞与などの形で表現されるものが、経営者の場合は組織の業績として表されることになります。一度経営を経験した人の多くが会社員には戻れないと言いますが、その理由はこの辺りにありそうです。

自由ゆえのリスク

言わずもがなですが、自由に経営をしている限り、その経営者には会社員時代に負わなかったリスクを負うことになります。日々の業務における従業員のミスから、経営方針に関わる自分の判断ミスに至るまで、失敗の最終的な責任は全て自分が背負います。会社員時代には、コンプライアンスなどに違反せず課されたタスクを日々処理する限り毎月給与が振り込まれましたが、経営者の場合、事務所の売上が無ければ個人の取り分もありません。会社員時代よりも個人としての収入が下がるリスクもあります。

会社員時代とのもう一つの大きな違いが、信用です。それまでこの世に存在しなかった組織を創るため当然ではありますが、潜在顧客だけでなく、不動産屋も銀行員もあなたのことを知りません。簡単にはアポが取れない機関もあります。会社員時代はファームの看板があるので気づきにくいのですが、信用がないとスムーズにいかないことが多々あるでしょう。

ここで紹介した独立のメリット・デメリット(リスク・リターン)を踏まえ、独立開業への意欲が逆に高まるような方は、既に独立開業すべきタイミングにあると考えて良いでしょう。そうでない場合、できることを積み上げながら自信を高めることで、気持ちに変化が出て来るかと思います。