高齢化の進展等に伴い、国内の事業者数は減少傾向にあります。一方で、公認会計士と税理士の登録者数は増加傾向にあります。組織の中で活躍される方ももちろんいらっしゃいますが、独立会計士にとって需給バランスがより緩んで行く流れは、当面の間、止められないでしょう。また、インターネットの普及により情報が手に入りやすくなったことで、顧客のリテラシーが向上し、会計士などのプロフェッショナルは、より厳しく選別されることが予想されます。今回のコラムでは、このようなビジネス環境でも顧客を増やすために大切な点をお伝えします。

「プル型」営業

公認会計士など士業の多くの営業活動は、「プッシュ型」から「プル型」営業への現代のシフトの大きな流れに関わらず、昔からプル型営業が主流でした。具体的には、セミナー、地元の商工会等団体、士業ネットワーク、書籍、Webサイト、SNS、DM、メルマガ等が一般的なプル型営業のツールです。これらツールをブラッシュアップさせ、引き合いの数や頻度を増やすための努力ももちろん重要ですが、引き合いを受けた後に顧問にしたいと思わせないと成約には至りません。また、一度顧問になった顧客も、あなたに魅力を感じなければ、離れて行ってしまうでしょう。そこで重要なのは、「もっと話を聞きたい、また会いたい」と相手に思ってもらえるか、です。

もっと話が聞きたいと思われるために

一般によく言われる「コミュニケーション能力」が重要ですが、男性が女性にアプローチする際に求められるコミュニケーション能力と化粧品の訪問販売の担当者に求められるコミュニケーション能力が異なるように、中小零細企業の顧問として求められるコミュニケーション能力も特有のものです。

経営者とのコミュニケーション
会計士が中小零細企業の顧問となる場合、もしくはなった場合、経営者と接することが多くなります。そのため、経営者の悩みに共感できることが重要です。具体的には、人事、資金繰り、営業や新規事業の立ち上げといった会社の機能ごとの重要課題を理解できることや、リーダーゆえの孤独さを察することが、該当します。会計士として独立開業された場合、ご自身も経営者になられるため、同じ立場で共感できるものが経験に比例して増えていくでしょう。

業の理解や気配りも重要

経営者の悩みに共感できることと並んで重要なのが、相手の業を理解することです。例えば、金属加工業の顧客と会話する際にマシニングセンタと旋盤の違いが分からない、もしくはネット広告業の顧客と会話する際にCTRの意味が分からなければ、顧客への関心が低い会計士だと見なされるでしょう。その次の重要なのが、気遣いや気配りです。空気を読むとも言えるでしょう。士業に限らず、先生と呼ばれる仕事をされる方の中には勘違いされる方が多いですが、気を遣うべきは顧客ではなくお金をいただく立場にある側です。仮に顧客を選べる立場にあっても同じことで、経営者の体調、スケジュール、趣味や家族のことなど、気遣いができるようになると、顧客はあなたを離しません。

税務会計の知識はあって当然

税務会計知識の重要性は、大企業や単発受注の場合は別として、中小企業の顧問となり長期的な関係を築く観点では、その次くらいでしょう。有資格者である限り、一定レベルはあって当然ですし、顧客のリテラシーが以前より上がっているとは言え、知識の点で他の会計士との差を判断するのは難しいからです。もちろん、Webサイト等では、知識のほか、過去の実績、2ヶ国語・3ヶ国語対応、幅広いネットワークなどを積極的にアピールすべきで、これらを否定する訳ではありません。

経営者の悩みに共感でき、相手に気を配り、一定レベルの知識の積み上げを怠らない。中小企業経営者から、また会いたいと思われる会計士となり、あなたのファンが増えていけば、自ずとクライアントは増えていくでしょう。