独立開業の目的について、分かりやすく具体的な表現になるまで考え抜くことが重要ですが、実際に開業してみると、日々の業務に追われ、開業時に描いた姿から乖離してしまう経営者が多いのが事実です。ここでは、経営を安定させ、開業時の目的を実現するための活動に時間を割くための具体的な目標設定の方法などを紹介します。

経営安定している会計事務所とは

経営が安定している多くの会計事務所は、生産性が高く、従業員も安定して定着しています。そのため、利益率も相対的に高くなる傾向があります。生産性や定着率を高めるためには、社員間における知の共有やそれぞれの自己研鑽が推奨されること、休暇が取りやすい環境であることなど条件が複数ありますが、これらの前提条件としては一定数の従業員が必要です。

会計事務所の場合、一般に、従業員数が10名を超えると、10名未満の事務所と比べて生産性や定着率が高くなる傾向が見られます。そこで、まずは従業員数10名の事務所とすることを具体的な目標の一つとして活動することを、お勧めします。

経営安定化のために必要なこと

実際に10名規模の事務所とするための主なポイントが、売上と人材です。売上が伸びて人手が必要となり人材を採用し、採用した人材が活躍することで売上がさらに伸びるといった好循環を生み出すことで、10名という目標の最短での突破を目指しましょう。

人材の採用や育成を成功させるための鍵は、事務所の方針・理念・ビジョンを明確にし、それに合った人材を採用することです。会計事務所の場合は人が商品となるため、特に担当顧客を持ち経営者の代わりとなってクライアントに接する従業員には、事務所の方針や理念を理解してもらう必要があります。つまり、経営者であるあなたが判断するのと同じように判断できる人を、事務所の方針や理念を通して育てるのです。これが上手く進むと、経営者は日々の業務を従業員に任せることができます。逆にそれが上手くできない場合、従業員の教育に時間を取られるだけでなく、顧客からの信用を失い、従業員の離職が続くなど、悪循環に陥りかねません。

売上は、経営者の営業センスやサービスの付加価値によりある程度まで伸ばせますが、従業員数10名に見合うだけの数字を維持し、さらに拡大させるためには、売上アップの方程式を作り、従業員にも同じ活動をしてもらう必要があります。どんなサービスを、いくらで、どこで、どのように提供するか、ということを、経営者の成功体験などから仕組み化するということです。

開業時に描いた姿に近づいているとの実感こそ、独立して良かったと思える瞬間だと思います。そのための一つの方法として、まずは従業員数10名を目標設定とする方法を紹介しました。皆さまの事務所の経営が安定し、独立の目的を達成するヒントとなれば、幸いです。