国内有数の難易度である公認会計士試験を突破された皆さんのように知識水準の高い方は、プライベートに限らずビジネス面でもマナーを守るなど道徳面のきっちりされた方が多い傾向にあります。

また、監査法人時代のクライアントは大手企業が多いため、同様にビジネスマナーを理解された方が多いです。一方、日本人であっても、ビジネスマナーがルーズな方は多くいらっしゃり、会計士や弁護士の中には、努力が対価に結ばれないことを悩まれる方がいると聞きます。今回のコラムでは、その対策となる営業活動における心構えをお伝えします。

腰は低く押しは強く

この言葉は、私が20代の頃に一緒に仕事をさせていただいた当時60代の営業エキスパートの皆さん(大半が元商社マンか元銀行マン)が口を揃えて言われた言葉です。顧客との信頼関係の構築や維持のためには、徹底して顧客に気を遣い(360度に気を配れと言われました)、顧客の悩みに寄り添う柔らかい姿勢が重要です。これを「腰は低く」と言います。ただし、それだけでは、特に士業のようにカタチのないものを扱う場合、顧客側のビジネスマナーへの意識が低いと「いい人」で終わってしまうリスクがあります。そこで重要なのが、「押しは強く」です。つまり、言うべきことは言う、ということです。

重要なのはタイミングの見極め

特に顧客獲得に余裕のない時期ですと、顧客に対し言うべきこと(多くの場合、契約締結や支払いを指します)を言えない人が多いようです。確かに、強く出るタイミングを誤ってしまうと、自分のことばかり考える人と見なされ、顧客に嫌われてしまい、契約獲得の機会を逃しかねません。判断軸として使えるのが、「ここまでやって嫌われたなら仕方ない」と思えるタイミングかどうかです。決して口に出すべきではありませんが、「これだけ貴重な情報を提供した」「ライバルより明らかにメリットある条件を提示した」と自分で納得して思えるタイミングであれば、多くの場合、顧客も同じように感じており、逆に言うべきことを言うことで、顧客との関係が一歩深いステージに入ります。

言うべきことを口に出すタイミングは、成功事例を積み重ねることで理解して行きます。一見すると矛盾しているように思えるかもしれませんが、顧客との長期的な関係を大切にしながらも、きちんと対価が発生するように、あくまで柔らかい姿勢を持って、最適なタイミングで強く出ることを忘れないで下さい。