高齢化社会などに対応するため、遺産相続のあり方について検討してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会で、相続分野の民法改正の要綱案がまとめられました(2018年1月)。

その中で、自筆証書遺言について制度が緩和されましたのでご紹介します。

遺言書の種類

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言とよばれる3種類のものがあります。自筆証書遺言とは全文を自分で書いた遺言書のことをいいます。公正証書遺言とは、公証役場で公証人と協力して作成する遺言書のことで、口頭で伝えた内容を公証人に書いてもらい、役場で保管されるものです。秘密証書遺言とは、事前に用意した遺言書を公証役場に持ち込み、遺言書を作成した旨の記録を保管してもらう遺言書のことです。

自筆証書遺言の改正:①自筆の範囲の緩和

今回の改正の対象になったのは自筆証書遺言です。自筆証書遺言は、偽造を防ぐため一定のルール(①「全文」を直筆で書く、②作成年月日を明記する、③署名、押印をする、④分割する財産が具体的に記述してある)が民法で定められています。

自筆証書遺言を残す際、分割する資産・債務の一覧(財産目録)を添付することが一般的ですが、それも自筆する必要がありました。遺言書の内容に具体的な分割内容を書く以上、作成は実質的に必須ですので、資産や債務が多い場合、これまでは大変でした。

今回の改正案では、財産目録についてはPC等で作成し印刷した自筆以外のものを添付することが認められるようになります。これにより、手書きによる記載誤りや記載漏れが少しは防げると思われます。

自筆証書遺言の改正:②遺言書の保管制度

従来、自筆証書遺言書は貸金庫に預けるか自身で保管するのが一般的でした。しかし、このような保管では相続発生時に適時に発見されないケースも多く、仮に弁護士等の専門家に預けていたとしても当該専門家が遺言執行人に指定されていなければ見届けることができないなど、使い勝手がよくない点もありました。

今回の改正案では、法務局で自筆証書遺言を保管できるようになります。これにより、遺言書の紛失を防ぐと同時に、意図的な隠ぺいや偽造を防ぐ効果も期待できます。

まとめ

今回の改正案では、自筆証書遺言作成上の煩雑さが少し緩和され、新たな保管制度が加わります。偽造や隠ぺいを防ぎ、相続対策中も相続発生後も、柔軟になされることが期待できるのではないでしょうか。