会計士事務所・税理士事務所は、当面、ライバルが増える一方で潜在顧客の数が減少するため、資格で守られた業界ながら、独立開業し成功するには勝つための戦略を持って挑むべき市場と言えます。そこで重要なのは、これまでの経験などから自分の得意な領域を見極め、また顧客のニーズを含む今後の市場動向を意識したサービスの差別化をすることです。

会計士が必要とされる業務

独立開業した会計士がクライアントから必要とされる業務は変わりつつあります。代表的な例が記帳代行です。現時点では、会計士・税理士事務所の多くが記帳代行を顧問先に提供していますが、AI・ITの発達により、間も無く付加価値がなくなると言われております。

一方で、多くの経営者が抱える問題の中で、会計士が引き続き解決できるものがあります。例えば、創業間もない時期であれば、資金調達にかかる問題です。事業計画書の作成や融資申請のための資料の作成などで会計士がサポートできます。業歴ある企業においては、資本政策を含む財務戦略などの問題で、「CFOサービス」と言われるサービスが必要とされます。

「創業支援」というマーケット

創業間もない事業者に対し資金調達サポートを中心としたサービスを展開する戦略は、前述の通りAI・ITがこれから普及する中でも引き続き価値あるサービスとして残るだけでなく、他の会計士・税理士の顧問契約を奪う必要がないとの利点もあります。

会計士事務所や税理士事務所は、顧問契約の数を増やすことで事務所の経営が安定しますが、すでに事業展開する企業から顧問契約を得るためには会計士・税理士の切り替えを求める必要があり、狭い世界では悪い影響が出てくるため必ずしも良い戦略とは言えません。

一方、創業間もない事業者であれば、まだ会計士・税理士と顧問契約していないケースが多く、資金調達のサポートを切り口とした創業支援をきっかけに経営者から相談を受けながら顧問契約を結ぶことができます。

顧客のニーズを感じ取ることが重要

資金調達のサポートを切り口とした創業支援が独立開業後の会計士事務所が取るべき戦略として有効な理由を説明しましたが、重要なのは、自分の得意分野や顧客ニーズ、および今後のトレンドを理解して営業戦略を立てることです。中でも顧客のニーズを理解することが重要で、そのために、顧客から相談される立場になれるようなアプローチが効果的です。その結果、顧問先に対しCFOサービスのような価値あるサービスを提供し、顧問先と共に成長していくことができます。

AI・ITの発達で会計士や税理士の業務は付加価値のあるものとないものに選別されます。顧問先にとって付加価値のあるサービスが何かを考え、提供し、従来の事務所が提供してきた業務にとらわれず、顧客から相談されるような存在になることがますます重要になります。