会計士事務所・税理士事務所を独立開業した場合、その成功の鍵の一つがマーケティングであることは言うまでもありません。マーケティング、言い換えれば「顧客に価値を提供し対価をいただく活動」の中で、業種を問わず起こりがちなミスが、自分の売りたいサービスを全面に出して逆に契約件数が伸びないケースです。ここでは、契約件数を伸ばしながら自分が売りたいサービスの提供に結びつけるための考え方を紹介します。

売りたいサービスが欲しいサービスとは限らない

会計士事務所・税理士事務所を経営する中で、特に独立開業から間もない時期は、「M&A」「事業承継」「経営計画策定」など、独立前の経験で得たノウハウを活かしたサービスの中でも高単価な案件や、中長期的に安定して報酬を得ることのできる顧問契約などを獲得したいと考える会計士が多いです。

高い営業スキル(センス)を持つ会計士の中には、このような切り口で契約件数を増やし成功しているケースもありますが、自分が売りたいサービスを訴求することは、自分から潜在顧客を絞っていることを意味するため、どうしても引き合い件数が減ってしまいます。また、ビジネス環境の変化が早い現代においては、幅広い規模・業種・ステージの事業者から様々な相談をされるようなプロフェッショナルになることが、中長期的な成長を図る上で重要です。つまり、引き合いの件数を増やすためのサービス展開を意識することが重要です。

顧客のニーズを起点にする

では、引き合い件数を増やすためのサービス展開とは、具体的にどのようなものでしょうか?先ほどの例とは逆に、顧客の欲しいもの、つまりニーズの高いサービスから提供していくことです。分解して表現しますと、顧客が必要と感じており、かつ急いで解決すべき状況にある経営上の課題等に対するサービスを中心に展開することです。さらに、幅広いタイプの事業者が共通して必要とするサービスですと、引き合い件数の増加がより見込めます。具体的なサービスの種類としては、「決算申告」「会社設立」「資金調達」などでしょう。日頃は会計士・税理士へのアクセスが少ない事業者であっても、サービスの内容がイメージしやすいメニューとも言えます。

売りたいサービスを意識した入り口のサービス

引き合い件数を増やすためのこのような商材を、営業の世界では「ドアノック商品(サービス)」と言います。顧客との接点を作ることを目的とした商品・サービスのことで、その商材単体で利益の獲得を狙うのではなく、その後に自分が本当に売りたいサービスまで契約獲得し、契約単価を上げ、中長期的に顧客とwin-winな関係を築くことを目指します。

会計士・税理士は、社会的ステータスの高いプロフェッショナルとして広く認知されているため、ドアノック商品で初めて会った顧客でも経営上の課題など経営者の悩み事を引き出しやすい存在と言えます。そのような機会を有効に活かすため、面談前から顧客のホームページをチェックし潜在的に抱える経営課題を推測し、面談時のコミュニケーションを通じて先方へ気づきを与えると同時にソリューションとなるサービス(=本当に売りたかったもの)を案内する、といった姿勢が有効です。

多くの顧客からの引き合い獲得を優先したメニュー展開できっかけを作り、顧客とのコミュニケーションを通じて新たな経営課題を発見し、第二、第三の取引へ繋げる。そのような意識を持って活動することで、契約の量と単価を同時に引き上げることができます。