会計士事務所・税理士事務所として独立後は、新たな顧問先の獲得や税務会計を中心としたサービスの提供に注力することと思いますが、これらの活動に過剰なコストを費やしてしまい相応の利益を計上できなければ、事務所経営は継続できません。ここでは、集客における費用の考え方について、説明します。

ストック型とフロー型ビジネス

複式簿記において、P/Lを「フロー」、B/Sを「ストック」などと表現することがありますが、ビジネスを収益獲得方法の違いで区分する際にもこれらの言葉を使うことがあります。

「フロー型ビジネス」と言えば、小売、流通、不動産仲介、飲食など都度の取引に応じて収益を獲得する種類のビジネスを指します。これに対して、「ストック型ビジネス」とは、顧客との間で契約を締結し継続的な取引を確保する種類のビジネスで、通信事業、電力・ガスなどが該当します。「サブスクリプションモデル」と表現されることもあります。

会計士事務所・税理士事務所のビジネスは、比較的リプレイスされ難く、「ストック型」に該当します。一定数の契約を獲得すれば収益が安定し、中長期的な観点で収支計画を立てやすい点がメリットと言えます。

紹介会社の利用

会計士事務所・税理士事務所は、資格という規制で守られていることもあり、投資回収が比較的容易なストック型ビジネスです。一方、事務所の成長のためには一定の利益を確保する必要があり、集客のために投下する広告などの費用について目安となる基準を持って活動することで、過剰なコスト投下を予防する効果が期待できます。 

目安となる基準の一つが、紹介会社を利用した際の手数料率でしょう。独立開業すると、このような会社から電話がかかってくると思いますが、契約の見込める顧客を会計士事務所・税理士事務所へ紹介し、契約が成立した場合に年間顧問料の40〜80%程度の紹介手数料を徴収する業者です。基本的に成功報酬型契約ゆえ利用する側にはリスクがありません。紹介会社を利用するのも選択肢の一つですが、その他の集客チャネルににおける販促費比率についても、上記40%程度を上限基準にすることをお勧めします。

1件あたりの受注単価は?

年間の顧問報酬に対する販促費比率として40%程度を上限基準にするべきとの説明を行いました。これに対し、日々発生する販促費に係る短期的指標として、1件あたりの受注コストを意識して活動すると良いでしょう。1件あたり受注コストが5〜10万円程度を下回るようであれば、費用対効果の高い集客ができていると言えます。逆に、20万円を超えるような場合、費用対効果が悪いため、チャネルの変更や改善が必要な状況と判断できます。

集客費用の投資回収が比較的容易なストック型ビジネスであっても、年間売上高に対する販促費比率や1件あたりの受注コストの基準を設定し、過剰なコスト投下の防止や各チャネルの費用対効果の検証に役立たせることの重要性を紹介しました。お役に立ちましたら、幸いです。