会計士事務所・税理士事務所として独立開業後、顧客獲得のために営業活動をされることと思います。今回は、事務所の安定的な成長に欠かせない、営業力を向上させるための管理手法や心構えについて、説明します。

問い合わせ1件あたりの費用はいくら?

新規顧客から契約を受注するまでには、問い合わせを受け、電話ないしメールで対応し、対面で初期相談に応じつつ報酬額を提示し、場合によってはフォローの連絡等を行う、といった一連のフローがあります。記帳代行でも税務相談でもIPO支援でも、このフローは基本的に変わりません。つまり、問い合わせの件数、問い合わせから面談に繋ぐ割合、面談から受注を得る割合、これら3つの数値の掛け算で受注できる契約件数(新規顧客数)が決まります。

ここで意識したいのは、問合せを得るまでに投下したマーケティング関連のコストです。具体的には、webマーケティング、ダイレクトメール、セミナー、紹介ルート開拓などのマーケティング活動にかかるコストです。

例えばダイレクトメールの場合、1枚当たりの平均的な費用と反響率から問い合わせ1件を得るのに2万円前後かかります。webマーケティングでも、これと同額程度か、少し高くなるケースが多いです。

会計士事務所はリプレイスされにくいストック型ビジネスゆえ投資回収は比較的容易ですが、それでも、1件1件の契約で利益を出しながら安定的に事務所を成長させるには販促費率を40〜50%程度以下に抑えるべきです。そのため、問合せの重要性を強く認識し、「そこまでされたら契約せずにはいられない」と相手に思わせるような丁寧な対応を心がけましょう。

受注率の差が大きな差をもたらす

問い合わせを受けてから成約するまでのフローにフォーカスした場合、受注率は(問い合わせから面談に繋ぐ割合)×(面談から受注を得る割合)で算出できます。次の事例の通り、受注率は事務所全体の収益に大きなインパクトを与えます。

月間問い合わせ件数を10件、報酬単価を30万円/年、問い合わせ1件を得るのにかかるマーケティングコストを2万円とし、受注率30%と10%で比較すると、前者で新規顧客が事務所にもたらす粗利益が840万円(※1)なのに対し、後者では120万円(※2)しかありません。

(※1)840万円=10件×12ヶ月×(30%×30万円-2万円)
(※2)120万円=10件×12ヶ月×(10%×30万円-2万円)

KPIとすべき指標

では、受注率はどうすれば引き上げることができるでしょうか?会計士事務所に限らず幅広い業界で一人前の営業マンが若手時代にやる方法が、KPIを使った改善活動です。

「問い合わせから面談に繋ぐ割合」と「面談から受注を得る割合」のそれぞれにKPIを設定し、課題を絞り込み、何が問題なのか振り返ります。電話や面談時の相手の発言を記録し、読み返すなどすると効果が高まります。慣れてくると、会話のリズムや面談相手の表情などから会話の最中に軌道修正できるようになり、そのレベルまでいけば受注率は相当高くなります。

今回は、独立会計士の営業力を向上させるための管理手法や心構えについて説明しました。1件1件の問い合わせへ丁寧に対応し、高い受注率を維持し、スピーディに事務所を成長させて下さい。