会計士独立コラム:会計士事務所の人材採用に必須となる母集団形成
国内の人手不足が広がる中、会計士事務所・税理士事務所として開業後に人材採用で困難を感じる独立会計士が増えております。今回は、自事務所への応募に関心を持つ人材を集める方法、つまり母集団形成の方法について、中小事務所の観点から紹介します。母集団は必ずしも多ければ良いという訳ではなく、求める人物像に近い候補者を、適切な数だけ集めることが重要です。
会計士に特化した人材紹介サービス
母集団形成の手段の第一が、求人媒体や人材紹介会社の活用です。求人媒体は、「求人サイト」や「転職サイト」などとも呼ばれます。人材紹介会社は、専任担当者が事務所と応募者の間に立って最適なマッチングを図る採用支援サービスを提供しており、成功報酬型であることが特徴の一つです。これら2種類のサービスを同一の企業が運営しているケースも多いです。
一般的にこれらの人材サービス会社はそれぞれに強み・弱みを持ち、業種や業態はもちろんのこと、地域、雇用形態、年齢層、性別などの特徴を理解し使い分ける必要があります。会計士に特化した人材サービス会社であれば、有資格の登録者数が多い、業界経験者が多い、新卒が多い、パート求人に強い、といった特徴があります。
求人媒体や人材紹介会社の情報を収集し比較したら、最適と思われる数社の担当者と面談し、人材サービス会社の説明を聞くと同時に、自事務所の採用方針などを伝えることとなります。また、特に人材紹介会社の場合は、求める人物像に近い応募者が現れた際にスピーディに紹介してもらえるよう、担当者と信頼関係を築くことも重要です。
ここで重要なのは、採用したい人物像を明確とした上で、自事務所で働くことのメリットを分かりやすく伝えることです。求める人物像の設定は、人材紹介会社の担当者との面談の前に必ず終わらせましょう。その人に任せたい業務がある程度明確になっていれば比較的容易にできます。自事務所で働くことのメリット、つまりアピールポイントは、応募者に求めるスペックだけでなく、事務所の成長性や働き方など採用したい人が魅力を感じるポイントを考え、具体的かつ短いフレーズにまとめると良いでしょう。
繰り返しとなりますが、会計業界においても人手不足が進んでおり、大手ファームが積極採用している影響で中小規模の事務所は有資格者や経験者の採用が難しくなりつつあります。マーケティングや営業の発想で、求人サイトや人材紹介会社を積極的に活用する意識が以前にも増して重要です。
スクールの活用
TACや大原簿記など公認会計士試験や税理士試験の受験生が利用する大手の会計系専門学校は、それぞれ年に2回程度、合同就職説明会(面談会)を東京や大阪などで開催します。規模の大きい面談会の場合、大手から中小までの会計事務所、税理士法人、コンサルティングファームなど計200社以上が参加し、各社が個別面談ブースを出展します。これらは主に税理士受験生の就職支援をメインとして専門学校が開くものですが、求職者は誰でも参加可能なケースが多く、1日で複数社の話が聞けるメリットから、毎回、非常に多くの求職者が足を運びます。
会計事務所の主な業務が、従来の記帳代行や申告業務から事業承継やM&Aなどのコンサルティング業務へ変化しつつある中、就職市場で競合となる他事務所の採用基準は低下傾向にあり、例えば以前は税理士試験4科目合格以上だった採用基準を2科目へ下げるといった傾向があります。
このように会計業界は売り手市場が続くため、スクールを活用した採用活動においても、マーケティングや営業の発想が重要になります。例えば就職面談会に出展する場合、事前に事務所のHPをチェックしてから就職面談会に足を運ぶ求職者は少なく、大手ファーム以外の事務所のブースへ自主的に来てくれる求職者はまずいません。そのため、呼び込み可能な時間帯になったら、体育会系のノリで一人でも多くの求職者を勧誘するくらいの意気込みが必要です。
新しい採用アプローチ方法
「攻めの採用方法」とも言われる新しいタイプの採用手法が、ダイレクト・リクルーティングです。求人媒体や人材紹介会社のように第三者へ母集団形成を頼るのではなく、事務所が自ら欲しい人材を探しアプローチする採用方法です。SNSの普及に加えて、キャリアを活かし転職する人の数が増えたことで、近年広まりつつあります。
具体的には、ビズリーチ、LinkedInおよびEight等を利用します。これらの企業ないしサービスは、従来は人材紹介会社やヘッドハンティング会社が独自に保有していた求職者等のデータベースを公開しており、直接検索することができます。
人材データベースには、すぐには転職を希望していないため求人サイト等には登録していないものの「いい機会があれば検討する」といった潜在的転職希望者が多数登録されており、幅広い層へ早い段階からアプローチできる点が特徴の一つです。また、求人媒体や人材紹介会社と比べ、低コストで採用に至るケースも多いです。
今回は、人材採用における母集団形成の方法について、独立会計士が会計士等の有資格者を採用する観点から紹介しました。人材採用は事務所の成長に不可欠な経営課題です。人手不足が深刻となる中、マーケティングないし営業の発想での人材採用を心がけてください。
現状の働き方に不安や疑問がある方は是非ご登録を!
公認会計士に特化したワーキングプラットフォーム
「会計士.job」
合わせて読むならこちら
現状の働き方に不安や疑問がある方は是非ご登録を!