公認会計士事務所・税理士事務所として独立開業後は、クライアントの増加やサービス領域の拡大に合わせ社員を増やし、事務所の更なる成長を目指します。以下では、苦労して採用した会計人材の退職を防ぐためのポイントを紹介します。

社員の不満に気づくこと

事務所の成長に人材の採用は欠かせませんが、会計業界においては、即戦力となる有資格者や業界経験者を中心に、人材採用は難しく、一人採用するのに相応の時間と費用がかかります。また、人が商品とも言える会計事務所においては、採用後も資格取得の奨励や同行監査などコストをかけて育成します。

特に小規模な事務所においては1名の離職が事務所全体に与える影響が大きく、コストをかけて採用・育成した社員の離職を防ぐために、働きやすい環境を提供し人材を定着させることの重要性は言うまでもありません。

会計事務所の社員にとって働きやすい環境環境を作るために外せないポイントが、社員の不満をキャッチする所長のマネジメント力です。昇進や賞与などを決める評価に対する不服、仕事内容への倦怠感、曖昧な事務所の中長期戦略への不安など、社員は多様な不満を抱えるものです。

所長は、社員が出す不満サインに忙しい時でも気づけるよう、それぞれの性格や経験などを理解しつつ、オンとオフのコミュニケーションを欠かさないようにします。

評価制度の構築は早期に

事務所の規模が小規模から中規模となると、所長一人のマネジメント力では働きやすい環境が作りにくくなります。そこで、離職の理由になりやすいとの理由から、昇給や賞与等を決める評価への不満を少なくするため、早いタイミングで評価制度と給与体系を構築し導入すると良いでしょう。

評価制度や給与体系は、導入後は容易に変更できませんので、最初の設計が肝心です。これらは、事務所を成長させるうえで重視する点をクリアにしていなければ構築できません。つまり、中長期戦略等と整合性の取れた内容のものを作ることになります。また、中長期戦略は、経営理念やビジョンをベースに策定するものです。評価制度や給与体系の構築に当たり外部コンサルタントを活用する事務所が多いですが、まずは中長期戦略等の見直しから着手すると良いでしょう。

今回は、人材を定着させるためのポイントを、所長のマネジメント力と評価制度等の2つの観点から説明しました。会計人材の売り手市場が続く中、皆様の事務所が安定的に成長するための一助となれば幸いです。