【会計士インタビュー】キャリアを切り開く勇気と挑戦
今回はJ-SOXや経理未経験者向の研修・チューター業務等で活躍している内田さんにお越しいただきました。会計士.jobの活用方法や自分の叶えたいことに向けてどのように行動したか、色々聞かせていただきました。
内田公認会計士事務所 代表
内田 朋宏 様
監査法人の金融部で6年勤務後、新たなチャレンジをするためにカナダとフランスへ語学留学をし、帰国後に経理全般の経験を積みたくて帰国後に中小規模の外資系企業へ転職、外資系の経験を得てその後独立。現在は家庭との時間のバランスを取りながら、経理に関連する業務の助言、代行、教育に関する業務で活躍中。
1.キャリア概要、独立の経緯
――最初に、内田さんのキャリアの歩みと独立に至る経緯を教えてください。
(内田氏)
私は2004年に大手監査法人の東京事務所に入社し、当初より希望していた金融部門でキャリアをスタートしました。そこで主に銀行やその子会社の監査業務を担当し、金融業界の仕組みやルールに深く関わる経験を積むことができました。当時、私は大手銀行グループの監査を手掛けていましたが、もっと規模の小さい銀行や地銀の子会社にも興味を持ち、小規模な金融機関にも携わる機会を得ました。
その後、独立系の証券会社の監査でも主任を担当することになり、金融全般にわたる知識と実務経験が蓄積されていきました。監査の仕事は非常にやりがいがありましたが、30歳になる頃には、もっと新しいことに挑戦したいという気持ちが芽生えました。
――その後、30歳を迎えた時に大きな転機があったと?
(内田氏)
はい、30歳を迎えた時、これまでのキャリアを一度見直し、新たなチャレンジをしたいと思うようになりました。そこで、大きな変化を求めてカナダとフランスに語学留学を決めました。最初はカナダのバンクーバーに滞在し、英語を勉強していましたが、「どうせならもう一つ新しい言語を学びたい」と思い、途中からモントリオールに移り、フランス語を学びました。その後、フランス、パリにも3か月ほど滞在し、異文化に触れながら自分自身のスキルと視野を広げることができたと思います。
この海外での経験は、私にとって非常に貴重なものであり、キャリアだけでなく、人生全体に対する考え方に影響を与えました。帰国後は、外資系企業での仕事に挑戦し、語学や異文化での経験を活かしながら、さらに多くの業務に携わるようになりました。
――帰国後のキャリアも非常に興味深いですね。
(内田氏)
そうですね、帰国後は外資系企業でFP&Aや経理業務に従事することになりました。FP&Aの仕事は、予算を立てるだけでなく、企業全体の経営計画や資金繰りを担当する重要な役割を担うものです。特に外資系企業では、企業文化や業務プロセスが日本企業とは大きく異なることもあり、最初は戸惑うこともありました。
外資系企業に勤務している間には、内部監査やUS GAAP(米国会計基準)に基づく監査の対応、さらにはERPシステム導入など、リストラを含む複雑なプロジェクトも担当しました。特にERPシステムの導入時は、システムの構築やデータ移行の管理など多岐にわたる業務をこなす必要があり、非常にハードでしたね。このような経験を経て、自分自身がより幅広いスキルを持つ必要性を強く感じました。
しかし、家族との時間をより大切にしたいという気持ちが強まり、最終的には関西で独立することを決意しました。2022年に独立し、現在は家族とのバランスを大切にしながら仕事に取り組んでいます。
2.独立初期の状況
――独立するきっかけとなった具体的な出来事や考え方を教えてください。
(内田氏)
独立を決意するまでにはいくつかの要因がありました。まず一つ目は、家族との時間を増やしたいという気持ちが強くなったことです。仕事の都合上、家族と一緒に過ごす時間が限られていたことが、徐々に私自身のライフスタイルや働き方を見直すきっかけとなりました。
さらに、外資系企業での働き方にやり切った感もありました。外資系企業は効率的な仕事の進め方が魅力的ではありましたが、長時間労働や頻繁なプロジェクトでのストレスが溜まっていました。特にERPシステム導入などの大規模プロジェクトに携わった際には、寝る時間すら削らなければならないほど多忙な日々が続き、心身共に負担が大きかったです。そのような中でも、プロジェクトを完遂できたのは大きな自信にもなりました。同時に、達成感から、より自分らしい働き方を模索し始めました。
コロナ禍での経験が、独立の最後の一押しとなりました。コロナ禍ではリモートワークが広がり、働き方の多様性が一気に加速しました。これにより、場所に縛られずに仕事ができる可能性があると気づき、「これなら関西に戻って独立しても、クオリティの高い仕事ができるのでは」と感じました。この時期に自分の価値観や優先順位が大きく変わり、独立を本格的に考えるようになりました。
――独立されてから最初はどのような状況でしたか?
(内田氏)
独立初期は本当に手探り状態でしたね。特に営業面での苦労が大きかったです。監査法人からすぐに独立する方たちは、先輩や元同僚の支援を受けることができるケースが多いですが、私は少しそういった業界内での人脈が切れていたこともあり、完全にゼロからのスタートでした。また、私は東京から関西に戻ってきたので、地元での人脈作りも一から始める必要がありました。
そこで、会計士.jobなどのオンラインプラットフォームが非常に助けになりました。オンラインでの仕事の募集や案件に応募することで、自分のスキルに合った仕事を見つけることができました。
最初に手掛けた仕事では、クライアントとの信頼関係を築くことを大切にし、誠実に対応することで少しずつ評価を得ることができました。これにより、次第に紹介やリピートの仕事が増え、安定してきました。
――現在も独立当初のような課題はありますか?
(内田氏)
独立してから時間が経っても、やはり営業や時間管理には常に気を配る必要がありますね。最初は仕事の量が少なかったため、焦って無理をして多くの仕事を抱えすぎたこともあります。その結果、スケジュールが破綻してしまい、クオリティを保つのが難しくなったこともありました。今は少しずつ自分のペースを見つけ、無理のない範囲で仕事を進めるようにしています。
3.会計士.jobの活用状況
――独立後、会計士.jobをどのように活用されていますか?
(内田氏)
会計士.jobを初めて知ったのは、ネットで「会計士」「独立」などのキーワードで検索していた時です。その時ちょうど、フリーランスという働き方に興味があったので、会計士.jobがまさに自分のニーズに合っていると感じました。最初の案件は、金融関係の監査業務で、ブリッジコンサルティンググループの大阪事務所の方と協力して進めました。
――最初の案件ではどのような経験をされましたか?
(内田氏)
最初は非常に緊張しましたが、クライアントとのコミュニケーションを大切にし、細かい報告や進捗管理を徹底することで信頼を得ることができました。その後も、内部監査や内部統制の支援など、年間を通じて取り組む案件をいくつか担当しました。
また、ITの専門家とチームを組んでプロジェクトを進めることもあり、リモートでの仕事が多かったため、最初の1~2か月は特に注意深くコミュニケーションを取るよう心がけました。リモートワークの難しさとして、プロフェッショナルメンバーによって前提条件や考え方が異なる場合も多いので、しっかりとすり合わせを行うことが重要だと感じました。
4.独立体験からの学び
――独立してみて学んだことや感じたことがあれば教えてください。
(内田氏)
独立して最も大きく感じたのは、自分の仕事が直接的に評価され、クライアントから感謝される機会が増えたことです。監査法人に勤めていた頃は、ルールに基づいて業務を進めることが多く、時には「やらされている」という感覚を持ってしまうこともありました。しかし、独立後は自分の裁量で仕事を進めることができるため、やりがいを感じる場面が増えました。
例えば、クライアントが何を求めているのかを自分で判断し、提案型の仕事を進めることで、より前向きな姿勢で取り組むことができるようになりました。このような自律的な働き方は、私自身にとって非常にプラスでしたね。
――逆に、失敗から学んだことはありますか?
(内田氏)
もちろん失敗もたくさんありました。特に、時間管理がうまくできなかったことが一番の課題でした。最初の頃は、調査や準備が不十分でクオリティが下がってしまうことがありました。仕事が忙しい時期には、スケジュールが逼迫してしまい、結果的にクライアントに迷惑をかけてしまったこともあります。
この経験から学んだのは、「どこで他の人に頼るべきか」を適切に判断することです。独立後はすべて自分でやる必要があるため、何でも自分でやろうとすると限界がきてしまいます。そのため、外部の助けを借りることやチームでの仕事の進め方をうまく取り入れることが重要だと感じました。
5.将来の目標とビジョン
――今後の目標やビジョンについて教えてください。
(内田氏)
今後の目標は、仕事と家庭のバランスを大切にしながら、着実にビジネスを大きくしていくことです。独立しているからこそ、時間の使い方に柔軟性がありますし、その点を活かしつつ、自分のペースで仕事を進めたいと思っています。
また、将来的には、会計士.jobのようなプラットフォームを活用し、リモートワークや地方での案件を積極的に手掛けていきたいと考えています。特に、地方でもクオリティの高い仕事を提供できる体制を整え、地域経済に貢献することが目標です。
――具体的なキャリアプランはありますか?
(内田氏)
具体的には、40代を迎えた頃から、ただ働くことだけが目的ではなくなりました。副業やリモートワークの普及が進んでいる今、自分の興味や家族との時間を優先しつつ、柔軟な働き方を選ぶことができるのは素晴らしいことだと思っています。
今後は、自分のスキルをさらに磨きながら、地方でのビジネスチャンスを広げていきたいです。そして、地域や家族との時間を大切にしつつ、自分自身も成長できる働き方を追求していきたいと考えています。
6. これから独立を目指す方々へのメッセージ
――独立のタイミングについても悩む方が多いですが、その点はどうお考えですか?
(内田氏)
確かに、独立のタイミングは悩むところですよね。私自身、自分の独立のタイミングはかなり遅かったと思っていますが、それでも今のタイミングで良かったと感じています。家族との時間や生活のバランスを考えた結果、独立という選択が自分に合っていると確信しました。
――最後にこれから独立を目指す方々に向けて、メッセージがあればお願いします。
(内田氏)
これから独立を考えている方には、まず「無理をしないこと」が大切だと伝えたいです。会計士としてのキャリアには多様な選択肢があり、監査法人や事業会社での経験が必ずしも独立に直結するわけではありません。独立するタイミングや理由は人それぞれですし、必ずしも急いで決断する必要はないと思います。 まず自分のライフスタイルや価値観に合った働き方を見つけ、少しずつステップを踏んでいくことが成功への鍵だと思います。リモートワークや副業の可能性をうまく活用しながら、独立後も充実したキャリアを築いていただければと思います。
インタビューを終えて
今回は内田公認会計士事務所代表の内田朋宏様にお話を伺うことができました。
監査法人でのキャリアから海外での語学留学を経て、外資系企業に転職された内田さんが、ご家族と過ごす時間を大切にするために独立を選択された点が印象的でした。最近では、30代・40代を中心に、同様の考えを持つ会計士の方が増えてきており、大変参考になるのではないでしょうか。また、UターンやIターンを検討されている方々にとっても、有益な情報だと思います。ありがとうございました。
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