公認会計士試験に合格して入所した監査法人で、任される仕事が高度になるにつれ、やりがいを感じていくでしょう。それと同時に労働時間が増え、体力勝負のような働き方をこれからも続けていけるのか考えることも増えるのではないかと思います。
そこで、今回は、監査法人から会計事務所へ転職した筆者が、監査法人以外のキャリアとして「会計事務所で働く」という選択肢についてお伝えします。

■会計事務所の具体的な業務内容

会計事務所といっても、所長や経営層の経営戦略によって、働き方、業務内容、顧客層などは大きく異なります。その中でも共通している会計事務所の主な業務内容は、税務業務、株式上場支援、M&A支援などです。

1)税務業務

税務業務は、大企業から中小零細企業・個人事業まで必ず必要な業務です。規模の小さな会社であるほど、税務申告まで社内で完結できる人材体制を整えることが難しいため、公認会計士・税理士の関与のニーズがあります。
独立を考えている公認会計士にとっては最も実務経験を積んでおくのがよい分野といえるでしょう。公認会計士ですので、試験で培った税務の知識はあると思いますが、それはあくまでも基礎知識。その知識を個別具体的に企業や個人に当てはめ、処理や手続を適切に行い指導するために、経験の数が求められます。


独立を考えていなくとも、税務顧問契約は、毎月又は決まった頻度・決まった納期・定型的な業務が多いため、比較的、1年間のスケジュールが立てやすく、また事務所の中でも分業がしやすい業務であるといえます。公認会計士が担うのは、主に事務所職員さんが作成した試算表のレビュー、仕訳の通査、税務申告書の作成等です。


企業税務とは別に「資産税」の分野もあります。主に、相続・事業承継に関する分野です。資産税を専門で取り扱う会計事務所もあるように、専門性の高い分野ですので、これらに興味がある場合は、専門の会計事務所で経験を積むことをおすすめします。

2)株式上場支援、M&A支援


事務所の所長が公認会計士である場合、公認会計士ならではの業務の経験を積むことができます。株式上場を目指す会社の規程作成支援、内部統制構築支援、ストック・オプションのスキーム策定支援等の業務です。これらは、内部統制が十分に整った上場企業への監査経験があれば、その知識や経験を存分に発揮できる分野です。


また、会社がM&Aを行う場合、財務デューデリジェンスや株価算定を行うこともあります。これらも、監査の経験に加えて、特有の論点の勉強次第で、十分に会計士としての知見を活かせる分野です。


これらの公認会計士業務を経験してみたい場合は、所長が公認会計士である事務所を選択しましょう。

■会計事務所への転職や税務業務での独立を考える方へ


税務は、監査以上に細やかさが求められると思います。監査業務での「マイナーパス」という概念は一旦忘れて、1円単位まで突き詰めていく、というマインドチェンジに最初は戸惑うかもしれません。


しかし、税務は、お客様からの感謝を感じやすい分野です。また、複数の企業に並行的に関与できるため、知識や経験の得られ方が早いと思います。さらに、月単位でスケジュールが立てやすいため、生活とのバランスをとりやすいといえます。


一度、会計事務所で経験を積んでみませんか。