転職か独立か。会計士としての将来を考えるとき、この2択で考えることが多いと思います。しかし、いきなり外の世界へ飛び出すのは不安もありますね。では、独立でも転職でもない、『副業』という選択肢を考えてみたことはありますか? 

近年は「働き方改革」の名のもとに、副業を認める企業も現れ始めました。本業だけでは得られない多様な経験をすることで、本人と本業の雇用主の双方にとってよい効果が得られるという期待もあってのことです。

勤務先で認められていることが大前提ですが、転職や独立などで環境を大幅に変える前に、本業や私生活に支障のない範囲で、副業からキャリアの幅を広げてみませんか。

今回のコラムでは、実際に勤務会計士が現状の仕事を変えることなく経験したことのある副業の事例を集めてみました。

●専門学校や大学等での受験指導
 資格の専門学校や大学の講座等での会計士試験の受験指導業務、具体的には講師業務や採点業務等です。試験勉強は皆さんが一度は通ってきた道ですし、多様な実務経験に基づいて、受験生にとって有用な知識を披露できる業務であるといえます。
 講師業務は、主に土日や平日の夜に、学校に出向いて講義をしたり教材の打合せをしたりします。教材作成に携わることもあります。採点業務は、答練が行われる都度、決まった期限までに採点を行います。答案の集まる学校に出向くか、答案を送付してもらい在宅で採点するかのいずれかの方法で対応します。
 これらは、講義や採点の品質管理の観点から、紹介で採用されることが多いようです。

●執筆
 会計・税務等の専門書、資格取得に関する指南書や会計の観点を用いたビジネス書、専門雑誌・新聞・専門ウェブサイト等のコラムの原稿を執筆する業務です。
 執筆の意欲はあっても、出版社や執筆業で著名な方とのつながりがなければ、著書の出版自体は難しいものです。そのため、まずは読者の反応を見ることができるブログやSNSで発信してみてはいかがでしょうか。実際に、趣味で受験勉強テクニックに関するブログを書き続けていたところ、大手出版社の編集者の目に留まり、専門雑誌のコラムを執筆するに至った事例もあります。
執筆に興味がある場合、まずは書くことを習慣化し、読者にとってわかりやすく興味を持ってもらえるような文章力と発信力を磨いていくことから始めてみましょう。

●小規模企業・個人事業のバックオフィスサポート
 周りに、営業も事務も一人で行っていて忙しさに頭を抱えている経営者の方はいらっしゃいませんか?そのような方に対するバックオフィスのサポートや、業務効率化のコンサルティングを本業の時間外に行っている事例もあります。
 右腕となる従業員を雇うほどの余裕はない、とはいえ自身で事務をする時間もなく、非効率な仕組みで業務フローに無駄が生じている、という問題点を経営者が抱えている場合、副業会計士の出番といえそうです。監査経験があると、あるべき内部統制や効率的な業務フローがわかっているため、その知識を活かして業務フローを再構築したり、新たなシステムの提案をしたりすることで、経営者をサポートすることができます。

●開示書類のチェック
 計算書類、株主総会の招集通知など、社内で開示書類を作成する人材が不足している場合、チェック機能だけでもアウトソースする企業があります。開示書類の全体の整合性や記載事項の網羅性・正確性をチェックして要修正点等をフィードバックする業務です。書類の草案を受け取り、期限までにフィードバックするという進め方が多く、期限内であれば場所や時間を選ばないため、ニーズさえあれば副業に向いているといえるでしょう。

 『副業』について、少しはイメージがわいたでしょうか。他にもここに挙げた分野以外で活躍している会計士は存在します。自身の可能性を広げるための挑戦は、案外身近なところから始められるものといえるかもしれませんね。