決算対策は必要か?

○平成28年度税制改正により、法人実効税率の「20%台」が実現し、また、平成30年度へ向けて法人実効税率が段階的に引き下げられることが決まりました。それでも、中国、カナダ、イタリア、イギリス等と比べれば日本の法人実効税率はまだ高く、法人税等の支払いは、全ての企業のキャッシュフロー上の大きな負担となっております。

○一方、企業経営は、取引先の倒産、パートナー企業の不祥事によるレピュテーション悪化、為替変動、原材料の市場価格、模倣品、海外の法規や政治動向、少子高齢化の進行に伴う人手不足など、外部要因を含め多種多様なリスクを内包しています。

○決算対策、いわゆる「節税」を活用することで、経営が順調なときの税負担(≒利益)を抑えるだけでなく、リスクが顕在化し経営状態が厳しい時には、過去に抑えた利益(およびキャッシュ)を当期に取り込むことで、経営の安定化やキャッシュの最大化を図ることができます。つまり、企業経営を中長期的に安定させる効果が期待できます。


その他の手法と比べ生命保険は優れているか?

○一般的な決算対策手法として、車両など有形固定資産の購入や、従業員への決算賞与があります。ただし、前者は、実際に必要な資産の額と抑えたい利益の額に乖離がある(大抵の場合、乖離はある)と、その他の手段を用意する必要があります。また、将来、資金繰りが苦しくなった際にいくらで売れるかは分かりません。

○後者は、従業員の一時的なモチベーションアップは見込めるものの、もらえるのが当たり前となった場合、もらえなかった時には逆に従業員のモチベーションを下げてしまいます。会社への貢献度が高い人材ほどそのように感じるものです。

○生命保険の場合、保険商品の選定や保険金額の設定により、損金の額を調整できます。さらに、一部の保険商品は、将来のある時点で解約した際に戻ってくる現金の額と益金計上額が、予め約束されています(※)。また、企業経営を安定化させることだけを目的とするのであれば、経営トップや取締役のみを被保険者として加入することができるため、一般の従業員のモチベーションに働きかけることはありません(具体的なメリットやデメリットは、次回以降で説明します)。このように、生命保険は従来型の手法が持つ課題をクリアした合法的かつ効率的な決算対策手法であるため、非上場企業を中心に、広く活用されています。

○なお、決算対策手法として活用される生命保険は複数種類あり、数多くの生命保険会社が商品を開発・販売しています。会計士の皆さまにおかれましては、クライアント企業から相談を受けた際や、CEOやCFOの立場で検討される際には、クライアントないし自社に最適な商品を中長期的な目線から設計するために、日系と外資系を含む数社の生命保険会社の商品を扱う、乗り合いのプロ代理店と一緒にご検討されることを、お勧めします。

(※)正確には、生命保険会社の倒産リスクと税制改正リスクがあります