CFOといえば財務、経理、税務。事業に関する数字面から経営陣の一翼を担う存在という意味ではCFOは会計士にとってはなじみのあるポジションといえるでしょう。
 だからといって、会計士がただちにCFOに向いているとは言い切れません。それは、CFOの業務は単に数字が読めるとか会計基準がわかるというだけでなく、会社の価値を高めるためという観点から必要な戦略を実行するという重要な役割が求められるからです。
 将来的にCFOになりたいと考えている会計士のかたのために、知っておきたい3つのポイントを挙げたいと思います。

1.CFOの職務-幅広いスキル・役割が求められるポジションであること
CFO候補が募集される場合、「会計に強いこと」「事業会社経験(特にマネジメント経験)があること」という条件がつく場合が多くあります。このほか、「資金調達に強く事業計画が策定できる」「経理経験・チェック経験がある」など、理想を挙げればきりがないほどに多様なスキルが求められます。
会計に強いことのみであれば会計士でも申し分ないと思いますが、むしろ求人する会社側ではそれ以外のスキル、特にマネジメント経験を求めることが多くあります。
CFOになったら、経理担当者だけでなく会計や財務の専門知識を持っていない従業員 ともうまくコミュニケーションをとりながら組織を支えていく覚悟が必要です。会計士だからといって、数字面でしか物事を考えることができないでいると従業員からの信頼は得られませんし、ビジネスの根幹を理解したうえで、会社を動かしている各現場に敬意を示すことが大切と考えます。
会計士は、すでに作られた過去の数字から強みや弱みを分析する能力は長けていると思いますが、CFOは「Officer」ですので、会社が価値を上げていくために今後どうすべきかを考えていけるよう、少し頭の切り替えが必要かもしれません。

2.会社の規模による差
 企業の規模によっても、CFOとして求められる役割は異なります。
大企業(主に上場していて安定している企業等)におけるCFOの多くは経理部門や経営企画室からの昇進で就任することが多いといえます。そもそもこのような企業では、CFOというポジション自体になじみがなく、管理部長や経理部長の延長の管掌役員のような位置づけとされている場合もあります。この場合CFOの役割は経理と財務面の重要な点を把握し、リスクを最小限に抑えるコントロール機能を持っていること、そして、外部へのIR窓口としての役割が主といえます。
 中小企業・ベンチャー企業においては、経営管理全般を担う役割が大きいといえます。このような企業では営業・開発面の成長を急いだために管理面の整備が追い付かず、上場を目指すタイミングでCFOを選定しようとする事例が多くあります。そのため、まずは経理体制を整備し、税務会計から企業会計への移行、月次・年次決算の早期化を図ることなどから行っていく必要があります。さらに、資金調達が必要なときは銀行・VC等から資金調達をできるよう、事業の現状と将来計画を説明できるスキルも必要です。

3.他の経営層(CEO、COO)との連携
 CEOが描く経営をCOOが実行し、CFOは現状の経営や新規事業が企業価値を高めるためになされているかという観点で検証していく立場と描くと、CFOと他の経営層の位置づけや役割を理解しやすいと思います。会計士は、相対的にリスクを回避することが身についた専門家であるため、CEO・COOの経営の手綱をしめる役割としては適任といえるのではないかと思います。経営を妨げない程度に、しかし会社の価値を最大限高められるように自身のスキルを発揮するのはとてもやりがいのある仕事といえるでしょう。

 CFOについて、具体的にイメージはわいたでしょうか?近年、公認会計士をCFOとして迎えたいという企業側のニーズ(特に中堅企業・ベンチャー企業)は増しています。CFOとして働くことに興味がある場合は、案件に応募する機会があったときに少なくとも実務経験やスペックの面ではすぐに相思相愛となれるよう、 日々の実務のなかで意識されると良いと思います。