公認会計士が独立した場合、税理士登録は必要か?メリット・デメリットや登録なしで対応できる業務について解説

独立会計士にとって税理士登録は必ずしも必要ではありません。ただし、登録の有無によって対応できる業務範囲や顧客層に違いが出るため、自身のキャリアプランや得意分野に応じて判断する必要があるでしょう。
また、会計士が独立後に税理士登録をする場合には次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
- ① 業務の幅が広がる
- ② 小規模事業者のニーズに応えやすくなる
- ③ 収益の安定化が見込める
デメリット
- ① 実務経験が必要
- ② 維持・継続にコストかかる
「公認会計士・税理士」という肩書きで働いている独立会計士は多く存在します。実際に、会計士が独立を検討する際、「税理士登録は必要なのか」「登録しないと仕事に支障が出るのではないか」と悩む方もいます。さらに、独立後に税理士登録をしない場合、どのような影響があるのか、疑問に思う方も多いでしょう。
本記事では、税理士登録のメリット・デメリットや登録手続き、登録しない場合に可能な業務について解説していきます。税理士登録の有無で迷っている会計士の皆様にとって、今後の選択肢を整理する一助となれば幸いです。
税理士登録のメリット・デメリット
メリット
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① 業務の幅が広がる
税理士登録の最大のメリットは、業務の幅が広がる点です。非税理士の場合、税務代理・税務書類の作成・税務相談など、税理士法に基づく独占業務を行うことができません。
たとえば、顧客からの確定申告の代行依頼に応じることや、法人税の申告書を作成して提出すること、個別具体的な税務相談を受けることは、税理士でなければ違法となるおそれがあります。
違法となる理由は税務業務が下記に該当するからです。”税務相談(法第2条第1項第3号) 税務官公署に対する申告等、法第2条第1項第1号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法第2条第6号イからヘまでに掲げる事項及び地方税に係るこれらに相当するものをいいます。以下同じです。)の計算に関する事項について相談に応ずる”
出典:国税庁 6 税理士法違反行為これは登録を行っていない会計士との大きな違いであるといえます。
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② 小規模事業者のニーズに応えやすくなる
税理士登録を行うことで、税務にも対応できるようになり、特に中小企業や個人事業主のニーズに応えやすくなる点は大きな利点といえます。
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③ 収益の安定化が見込める
税務業務は継続案件が多く、収益の安定性にもつながるため、独立後の事業基盤を強化したいと考える人にとっては大きな魅力となるでしょう。
デメリット
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① 実務経験が必要
税務業務に取り組むには専門知識や実務経験が不可欠であり、監査業務を中心にキャリアを積んできた会計士にとっては学び直しが必要な場面もあるでしょう。
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② 維持・継続にコストがかかる
税理士会に所属することで、年会費の負担や定期的な研修受講、書類提出義務なども発生します。登録自体は資格保有者であれば比較的スムーズに進みますが、一定の手間や費用がかかります。
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税理士登録までの流れと費用
税理士登録の流れは以下の通りです。
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①必要書類の準備
- ・ 税理士登録申請書
- ・ 登録免許税領収書
- ・ 公認会計士の登録証明書
- ・ 住民票の写し
- ・ 身分証明書
- ・ 履歴書
- ・ 誓約書
- ・ 顔写真
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②税理士会への提出・審査
提出後、書類審査や面談が行われます。 -
③登録完了・会費の支払い
審査が通過すると、税理士登録が完了します。そして、所属税理士会への年会費が発生します。
(参考:日本税理士会連合会「税理士登録の手引」,2024年4月25日, p7~p8)
独立した会計士が税理士登録なしで活躍できる業務
税理士登録をしなくても、会計士として活躍できる領域はあります。以下のような業務は、税理士資格がなくても取り組むことができます。
財務コンサルティング
財務分析や資金調達、M&A、コスト管理、事業再生など幅広い分野で支援を行い、クライアントの経営改善や成長戦略の実現をサポートします。経営陣と連携し、課題解決に向けた具体的な施策の提案・実行支援を行うことが求められます。
M&Aアドバイザリー
企業の合併・買収(M&A)に関する戦略立案から実行までを支援します。買収先や売却先の選定、企業価値評価、交渉支援、契約書作成、デューデリジェンスなど、多岐にわたるプロセスを一貫してサポートします。クライアントの目的に沿った最適なM&Aを実現するため、財務・法務・税務などの専門知識を活かして円滑な取引を促します。
IPO支援
企業が株式公開(上場)を目指す際のサポートを提供するサービスです。企業の財務・法務・規制対応を整備し、上場プロセスを円滑に進めるための戦略的アドバイスを行います。また、投資家向けの説明資料作成や、証券会社との調整など、上場後の企業価値向上を見据えた支援も行います。近年ニーズが高まっている分野の一つです。
会計監査
法定監査や任意監査といった、会計士の本来業務ともいえる分野です。独立後は、中小規模の案件において自らがサイナーとして監査に従事するケースや、生計の一助や最新の監査実務をキャッチアップする目的で、監査法人の繁忙期に非常勤として勤務するケースも見られます。また、いわゆる「合意された手続き(AUP)」をクライアントから求められることも多く、独立を機に保証業務の領域が広がる可能性もあります。
これらの業務はいずれも高い専門性を必要としますが、税理士登録をせずとも従事することは可能です。会計士のスキルを活かせるキャリアは十分にあります。
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自分に合ったキャリアの選択を
独立後の会計士は、「会計士・税理士」の両方の肩書きを持って活動するケースも多く、税理士登録が当然と感じるかもしれません。しかし、税理士登録は必ずしも必要ではありません。あくまで自分のキャリアプランや業務の方向性に応じて、必要かどうかを判断するものです。
税務業務を積極的に展開していきたい場合や、個人事業主・中小企業の顧客を多く抱える予定がある場合には、税理士登録がプラスに働くでしょう。
一方で、財務コンサルティングやM&A支援などの非税務分野で勝負する場合は、コストや工数を考慮して登録を検討するのも良いかもしれません。
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