「公認会計士・税理士」との肩書きで業務をしている独立会計士のかたと出会うことが多くありませんか? 独立するなら、当たり前のように税理士登録もしておいたほうがよいのでしょうか。

数多くの独立会計士と対話してきた筆者の結論は、「税務業務を行う予定/行いたい意思があり、そこから仕事を広げたいなら税理士登録した方がよい。そうでなければ税理士登録は必要ではない」です。

税務業務を行うか否か

個人会計士として独立すると、会計士業務よりも税理士業務の方が依頼数として多いのは、実感としては十分にあります。会計士の得意分野は中堅~大企業の企業会計、税理士の得意分野は中小企業~個人事業主の税務会計という世間からの一般的な認識がある中で、独立したばかりの個人会計士のもとに個人的な信頼関係がない限り中堅~大企業から顧問になってほしいという声がかかる可能性は低いからです。

まずは個人事業主・中小企業のお客様の税務面からのサポートをしたいため税理士登録をする、という選択は合理的といえます。しかし、いざ税理士登録をしてみても、税務顧問の報酬で会費や申告ソフト料等の経費を回収できないようでは、経営として成り立ちません。また、税務の実務が分からない場合は、そもそもお客様の期待に応えることができません。

会計士登録のみでM&A支援業務、IPO支援業務、経営コンサルティング業務、監査業務の分野で会計士としての知見や経験を武器に活躍している独立会計士は多く存在します。自身がどのようなサービスラインで活躍していきたいかをまずは描きましょう。

税理士登録までの流れ

税理士登録のためにかかる期間は約2か月、初年度の費用は登録手数料・免許税等を含め30万円程度(2年目以降は年間約20万円前後)を要します。

具体的には、登録申請書類を記入し、戸籍・住民票等の添付書類を添えて必要書類一式を提出します。そのあと、税理士会での書類審査や所属予定の支部の幹部と面談を行い、問題がなければ(提出書類の一つである過去の確定申告書に税務のプロとしてあるまじき申告内容があると指摘されれば、しかるべき修正をしたうえで)晴れて税理士登録がなされます。

書類をそろえるのも審査される期間も、意外と手間と時間がかかりますので、登録を考えている方は早めに動き始めることをおすすめします。登録されるまでの間は「税理士」と名乗れないため名刺にも書けませんし、税務業務の受注や営業活動もできないことに注意が必要です。

アドバイス

税理士登録をしている、していないにかかわらず、会計士の知識と経験を活かせる業務は数多くあります。

その証拠に、会計士.jobには税理士登録をしなくても活躍できる案件がたくさんあります。「独立=税務=税理士登録」という発想にとらわれず、自身がどのような分野で世の中に価値を提供していきたいかを考えてみてはいかがでしょうか。