売上を伸ばすために営業活動が必要なことは言うまでもありませんが、具体的に営業活動を行うに当たり、打ち手、つまり顧客ターゲット、料金体系、プロモーションといったマーケティングから考える方が多いようです。マーケティングの重要性は全く否定すべきものではありませんが、その前にやるべきことがあります。それは、自分を知るという活動です。

商品は自分自身

公認会計士をはじめとした士業の皆さんにとっての商品は、皆さん自身です。ビールや複合機などのメーカーでも、営業部に配属されると「人が商品」などと言われますが、顧客が商品を選択する際の意思決定に対する影響度の観点で考えますと、組織で作った商品やサービスを販売する会社での営業と、士業のように自分の知識・経験・人柄に対し直接的に対価を支払ってもらう種類の営業活動は、根本の部分が異なります。

商品を知らないメーカーの営業担当など存在しない

当たり前に思われるでしょうが、自社で扱う商品の特徴を理解せずに潜在顧客へアプローチするビールメーカーの営業担当など存在しません。商品の強み・弱みを理解したうえで、最も効果的だろうと考える打ち手を絞り込み、潜在顧客にアプローチします。士業の皆さんも、商品である自分の特性を理解したうえで打ち手を絞り込むことで、より効果的・効率的な営業活動が実現しやすくなるわけです。

自分を知る

士業にとっての商品は自分自身で、ビールメーカーにおける営業活動と同様にまずその商品を理解すべきとお伝えしました。この説明を受け、相続、決算対策、IPO支援、事業承継など、過去の経験から得たノウハウの中で得意なもの(不得意なもの)を明確にすべきことと受け取られた方が多いと思いますが、それでは片手落ちです。大企業がクライアントのケースや、単発での業務受託でしたら、知識と経験を売りにした営業活動で受注が取れるかもしれませんが、中小零細企業の顧問となる場合、新規契約の獲得においても既存顧問先との長期的関係の維持においても重要なのは、あなたの人柄です。

また、知識・経験と違い、人柄は、一般に独立されるくらいの年齢を過ぎたら大きくは変わりません。だからこそ、まず自分と向き合い、例えば、話をする方が好きか、人の話を聞く方が好きか、20〜30歳くらい年上の人と話してもストレスを感じないか、知らない人同士が集まるような場を楽しめるタイプか、リーダーシップを発揮するタイプか、といった点をまず認識し、そのうえでマーケティングを考えることで、効果的・効率的な打ち手が絞り込みやすくなります。

これまで、急いで売上を伸ばすことに注力してしまい自分の人柄に合わないプロモーション方法や顧客ターゲティングを選択され、独立する前と比べて幸せそうに見えないプロフェッショナルに多く会いました。本コラムが、長期的により楽しく仕事を続けていくきっかけになれば、幸いです。