顧客のニーズを把握することがマーケティングを成功させる上で重要とのことは、会計士であれば誰でも理解していることと思います。ここでは、もう一歩踏み込んで、会計士事務所や税理士事務所として独立開業し売上を伸ばすためのマーケティングに役立つ、「ニーズの分類」を中心に説明します。ニーズを分類して考えることで、事務所として優先して提供すべきサービスを判断しやすくなり、クライアントと双方メリットある長期的な関係が築きやすくなります。

会計士・税理士が満たせる顧客のニーズ

「マーケットイン」と「プロダクトアウト」というマーケティング用語は、聞いたことがあると思います。念のために説明しますと、前者は、顧客の立場に立って買い手が必要とするものを提供していこうとする考え方です。これに対し後者は、提供側からの発想で商品設計や営業等の活動を行っていこうとする考え方を指します。

独立開業前にM&AやIPOなどの経験されている方、特定の業界に深い知見をお持ちの方、もしくはある地域ですでに顧客基盤をお持ちの方はプロダクトインの視点からマーケティングを考える傾向がありますが、ニーズの多様化・変化が早い時代だけに、ここではマーケットインの視点からニーズを考える際のポイントを押さえたいと思います。

顧客のニーズは、ターゲットとする顧客の設定により変わりますが、そもそも会計士・税理士が満たせるニーズとは何でしょうか?一つは、税務申告書の作成や記帳代行のようないわゆる従来型の代行業務です。もう一つが、経営アドバイス、節税対策、事業承継などのアドバイザリーないしコンサルティングです。これから独立開業される方は、成長分野でもあるコンサルティングまでカバーして顧客ニーズを捉えると良いでしょう。

ニーズと言っても様々

会計士事務所・税理士事務所の主な顧客は事業者で、そのニーズは多岐に渡り、事業者の規模、海外拠点の有無、業歴、成長戦略、財務状況、経理人材の有無などにより変わります。

ニーズを具体的に列挙すると、「税務顧問」「事業承継」「記帳代行」「決算申告」「資金調達」「節税対策」等です。顧客やタイミングによって異なるこれらのニーズは、フレームワークを活用して分類することで、顧客からの信頼獲得に繋がりやすくなります。フレームワークの一つが、必要性(顧客が必要と感じているか)と緊急性(急いで解決する必要があるか)の二つの指標で4つに分類する方法です。

満たすべきニーズの優先順位

多様な顧客ニーズをフレームワーク上で分類したら、顧客へ優先的に提案すべきサービスの順位を理解します。これは、案件の成約率が上がるだけでなく、顧客からの信頼を獲得する上で重要な考え方です。

優先順位のトップは、必要性と緊急性のいずれもが高いニーズです。次に、必要性は高いが緊急性は低いもの、そして、必要性は低いが緊急性が高いものと続きます。顧客の規模や状況によりますが、一般的に、「決算申告」「会社設立」「資金調達」などが、優先順位トップのニーズです。

ここで重要なのは、顧客ニーズの高いものから提案をすることで、たとえその仕事の単価が低い場合でも、顧客からの信頼獲得とその後のアプローチにより、中長期的な関係が築きやすくなることです。